20. こうしちゃいられない

目が醒めるとやたらと瞼が重くて、前日カカシさんの胸を借りて大泣きしたことを思い出す。恥ずかしすぎて穴がなくても入りたい。手で顔を覆って羞恥心を頭から振り払っていると、コンコン、とノックする音が聞こえた。

「名前ー?入るよー?」
「っ」

げ、と言うのがピッタリな心情だった。今は会いたくない、ともう一度布団を被る。

「あのね、大人舐めないでくれる?起きてんのは分かってるんだからネ。」

視線を感じて渋々起き上がる。

「素直じゃない。」
「あ、の、カカシさん、昨日は、」
「なーに?」

ニコニコとこちらを見てくる楽しそうな顔に鬼!と心の中で毒づく。

「まぁ、俺が暇な時はいつでも胸貸してあげるから、遠慮せず言いなさいよ。」

かぁ、っと顔が熱くなる。

「、結構ですっ!」

そ?残念、とさして残念でなさそうに笑われる。

「でも、ありがとう、ございました。」

そう言うと目をまん丸にして頭を掻いていた。

「で、何があったのよ。」

あんだけ付き合ってあげたんだから教えてくれてもいいでしょーよ、と言われる。

「別に、何も。月読の術の中で繰り返し見てた景色を思い出して辛くなっただけなんです。」

ごめんなさい、と言えば、まぁ確かにあの光景は堪えるよね、と眉を下げて納得してくれる。

「サスケ、明日退院できるらしいよ。」

ギクっと身体が強張る。だめだ、バレちゃう。

「そう、ですか。じゃあ私もこんな所でぐーたらしてる場合じゃないですね。」

笑顔を張り付けて言うと、じとっとした目で見られる。

「名前、」

丸椅子に腰を下ろして真剣な表情で言われる。

「サスケと何があった?」

どうしよう、と思っていると、カカシさんがはっと顔をあげる。ごめん、また後で、と言って瞬身で消えた。なんかあったな、と思った次の瞬間、大量のサスケのチャクラを感じる。

「!サスケ!」

数日食べていなかった所為でぐさぐさと刺された点滴を引っこ抜き、畳んで置いてあった服に着替える。チャクラを感じた方へ瞬身する。屋上でナルトくんが貯水ポンプに腕を突っ込んでて、サクラちゃんが泣きながら座り込んでて、カカシさんが屋上からどこかへ飛び移った。サスケを追ってるのかも、と思って気配を消して追う。ビンゴだった。木にワイヤーでサスケを括り付けてカカシさんがサスケに何かを話している。声が聞こえる位置に潜んで必死で気配を消した。

「あんたに何がわかる!知った風なことをオレの前で言ってんじゃねーよ!」

サスケが叫ぶ。いつも冷静なサスケが声を上げているのが怖かった。

「まぁ落ち着け。」
「何なら今からアンタの一番大切な人間を殺してやろうか?今アンタが言ったことがどれほどズレてるか実感できるぜ。」

見たことのないサスケに『サスケ君は必ず私を求める。力を求めてね。』というあの気味の悪い声が頭に響き渡る。

「そうしてもらってもけっこーだがな、あいにく俺には1人もそんな奴はいないんだよ。もう、みんな殺されてる。」

カカシさんの声を遠くでぼんやり聞きながら、なんとかしなくちゃ、と気持ちだけが焦る。サスケに嫌われたぐらいで、なにやってるの、私。弱っちょろい。あのくそ気持ち悪いオカマからサスケを救わないと。瞬身で家に戻り、必要な物を確認し買い物に出かける。いつも通り、サスケを迎えなくちゃ。サスケの大好きなご飯を作って、何もなかったように笑って迎えなきゃ。値段も見ずポンポン必要な物をカゴに押し込んで買い物を済ませ家路を急いだ。