21. 縋る

ガチャと開いて玄関に入ってきたサスケに、おかえり、と声をかけると驚いた顔をした。

「退院おめでとう。」

トマト鍋にしてみたよ、と続けると、机の上をチラリと見て自室の方へ歩いて行った。バタン、とドアが閉まる音がして、辺りがしーんとする。だめだったか。せっかく作ったし食べよう、と取り皿に取り分けているとガチャリとドアが開く音がしてサスケが出てきた。大好物攻撃が効いたのか?

「お前、何やってんだよ。」

グツグツと煮える鍋の火を止めて顔をあげる。

「失せろって言ったよな。」
「食べないの?」

深紅の目を光らせてそう言うと、黙って座った。使うのは卑怯だよな、と罪悪感を感じながら取り分けてお皿を渡す。それを受け取って素直に箸を口に運ぶ。サスケは心が綺麗なんだな、と改めて知る。こんなに綺麗に操れる人、今までほとんどいなかった。

「美味しい?」
「あぁ。」

ふふ、よかった、と笑顔を見せて私も口をつける。もう、限界なんだ、と悟る。ここまでやってやっと今までの生活になるんだ、と思い知らされる。悔しいけど、大蛇丸の圧倒勝利だ。

「今日ね、懐かしいもの見つけて思わず買っちゃった。」

カカシさんが持って来てくれたのと同じあのソーダを冷蔵庫から取り出す。

「覚えてる?」
「お前、ずっとそればっか飲んでたよな。」

甘ったるくて飲めねーから半分ずつ飲んだ奴だろ、と言われる。

「半分飲まない?」
「いらねーよ。」

甘くて飲めねーっつったろ、と冷たく言われる。

「じゃあ、一口。」

はぁ、とため息をついて、なんでそんな飲ませたいんだよ、とげんなりした顔で言う。

「いいじゃん。」

そう言ってサスケが座る近くに持って行き、ぷしゅ、と開栓して口に含む。

「は、自分で飲んでんじゃねーか。」

そう言ったサスケの*を両手で優しく包んでこちらを向かせ、口を押し当てる。少しずつソーダが唇の向こうに渡る。

「美味しかった?」

顔を真っ赤にさせるサスケに、知るかよ、と返される。

「だめ、わかるまで飲んで。」

そう言ってもう一度口に含む私を見て立ち上がったサスケを振り向かせて唇を当てる。観念したのか自分から吸い付くように唇が触れる。

「っふあ、どう?」

甘えた声を出すと、わかんねーよ、とぶっきらぼうにいつもよりちょっと低い声で言われる。失敗かな、と落ち込む私からサスケがソーダの容器を引ったくって自分で口に含む。なぜか光景がスローモーションで写り反応が遅れる。後頭部をがしっと手で押さえ、背中にまわされた手で抱き寄せられる。私が口移しした倍くらいの量が入ってくる。

「んっ」

飲み込み切れなくて唇の端から細い線が流れた。*に手が添えられ丁寧に親指でさっと拭われたのに驚いて、ゴク、と口に入っていた液体を飲み干す。手がまた元の場所に戻って、今度は追うように舌が入ってくる。ぞくっと全身に電気が走る。ぐっと身体を近づけられ、サスケの胸に置いていた手が自然と首に回る。舌が絡み合ったかと思うと、歯をなぞられ、下唇を啄まれ、何度も角度を変えて口付ける。

「これくらいしてくんねーと、わかんねーな。」

意地悪に笑う端正な顔が至近距離にあって、胸が破裂するんじゃないかと言うくらいどきどきし続けていた。かぁ、っと*が熱くなるのが分かる。

「なに、その顔。お前からしてきたんだろ。」

サディストスイッチが入ったらしいサスケに、恥ずかしくなり首筋めがけて抱きつく。

「サスケ、」
「どうしたんだよ、えらく甘えただな。」

耳元で囁かれて歯の間から息が漏れる。低めの声に痺れるような感覚がする。

「、そこで喋んないで?」
「どこ?」

意地悪にそう言って耳の上をかぷりと啄ばまれる。

「んん、サスケ、」

くつくつと笑いながら私を首に纏わり付かせたまま移動する。反撃とばかりに背伸びしてサスケの耳朶を啄むと動きが止まった。

「ふふ、サスケも弱いね?」

飴玉を舐めるみたいに舐めると、はぁ、っと息を吐く。それすごい色っぽい。とっくに目は漆黒に戻っていた。気づけばリビングから明かりが漏れて入ってくる薄暗い場所に移動していた。