25. 新しい世界

第4次世界大戦後、里は壊滅的な状態だった。教え子たちの活躍は目覚ましく事なきを得た世界。立て直しが必要だった。その希望として次期火影に掲げられたのは、他でもない自分の名前だった。あちこちで崩壊した建物の修復が進む。仲間を失ったもの、家族を失ったもの、様々な形で様々な人がそれぞれの新しい人生を始めていた。散々世を掻き回した教え子は「贖罪の旅に出る」と里には居着かず、国外を放浪しているし、俺は俺で火影として朝から晩まで里のために働きづめている。確実に新しい世界が回っている。

「カカシ先生、移住の申請が届いてるんすけど、」

どうしますか、と一目置く有能な部下がその文を渡してくる。火影への文書は機密のもの以外は基本的に側近がまず確認して、必要なものだけ俺のところに届くようになっていた。

「んー?どれどれ?」

几帳面な字で里への移住を望む文書が書かれている。申請者一覧にある名前を見て胸が高鳴った。あの日見た姓名変更届に並んだ名前と同じそれは、自分の知っているあの少女だろう。正確にはもう10年以上会っていないので少女ではないし、その証拠に3つ続けて名前が記されている。子供が生まれていた。最後に見た姿を思い浮かべて懐かしい思いに浸る。

「そうだね、受け入れようか。」

医療忍者はちょうど足りてないし、母子家庭ならいろんな苦労もしてるだろうしね、と付け加える。

「了解っす。」

次に来た文には到着予定日が書かれていて、今か今かと待ちわびる自分がいた。有能な部下に、どこ行くんすか、とじとりと睨まれながら火影室を抜けて、到着予定時間に里の門まで迎えに行く。程なくして感じる気配。面影の残る笑顔で声をかけられた。

「ご無沙汰しております。火影様。」

少女はすっかり母親になっていた。

「ん、久しぶり、名前。」

そういうとくすぐったそうに笑って、子供達の背中を押す。

「右から年齢順に、サツキ、イチカ、オリテと言います。」

ぺこりと礼儀正しく頭を下げた3人にニコリと微笑みかける。なーんか見た事ある面持ちだよね。目線で訴えかけると、困ったように笑う。

「よろしくね。」

再会をゆっくりと楽しみたいところではあるが、生憎、山のような仕事を放置して来ている。必要最低限だけを確認する。

「住む場所のあてはあるの?」
「はい。以前お借りしていた一族に再度貸して貰える事になりました。」

このご時世にありがたいです、と相変わらずの口上手で言われる。

「そ、なら安心かな。病院での勤務だけど、話は通してあるから明日時間があったら行ってみてよ。」

ありがとうございます、と一礼される。

「あと、アカデミー、ね。今の所は上の子2人だっけ?」
「はい。」
「ちょうど来週から学校再開だから通ってちょうだい。クラスは受付に行けば教えて貰えると思うから。場所わかる?」
「はい。何から何までありがとうございます。」

他人行儀な態度に少し圧倒されていると、疲れ切った顔をする子供達の顔が目に入る。

「じゃあ、また何かあったら気軽に相談してよ。」

そう言って背を向ける。少し心が軽くなっているのがわかった。