28. セカンドチャンス

夜遅めの時間帯にサクラが火影室に押しかけて来た。

「カカシ先生、私、ごめんなさい。」
「なーによ、何かあったの?こんな時間に。」
「私、サスケくんが浮気してるんじゃないかって、疑っちゃって、そしたら、サスケくんが任務先に呼んでくれて、嬉しくて、何も考えずに、サラダを連れて行ったんです。」
「あー、それはなかなか。」

前半部分の不安は自分がけしかけたものでもあるので罪悪感を感じる。ふとシカマルがバツの悪そうな顔をしているのが目に入る。ここにも罪悪感感じる人いたみたいね。

「あー、それ俺っす。なんかサスケの野郎が任務で手が離せないし、もしかしたら期限が伸びるかも知んねーけど、その、夫婦関係に支障をきたしてるから、って悩んでっから、じゃあもうサクラにも任務手伝って貰えば、って。」

まずかったすかね?と言うシカマルに、はぁ、とため息を吐く。

「今、サスケにお願いしてるのってちょっとデリケートな内容なのよ。シングルマザーで頼る当てもなくて、影分身して働きながら3人の子供を育ててる母親がいてね。そんな生活が少なく見積もって6年続いてるからか健康診断で綱手様もびっくりな結果が出ちゃった訳よ。」

サクラの顔がさーっと青ざめる。医療忍者ゆえにどのくらいヤバイか分かっているらしかった。

「だから本体だけに戻れって言ったんだけど、6年もやってたらそれなりに疲労も蓄積するじゃない?そいつ1週間ぐらいは起きれないんじゃないかって言うのよ。だからその間、子供たちを見て欲しい、って言う任務だったんだよネ。」

自分のアドバイスが地雷みたいなもんだったと気づいたのか、シカマルも顔色がさーっと悪くなる。

「あいつ、もっと前提条件言えよ。」
「んー、ちょっと心配だから様子見て来たいんだけど、」

抜けていいよね?と言うとシカマルはこちらを見ずにああ、と呟いた。サクラはカカシ先生、ごめんなさい、と本格的に泣き始めた。その場の収集は有能な部下に任せ、そそくさと彼女が眠る家へと向かう。なんだってこんなに困難が多いのかね、この子の人生は。家の前まで来てみると元凶の教え子の姿があった。

「ぐうの音も出ねえな。」

珍しく自己嫌悪に陥っていているらしい姿に、こりゃ、相当堪えてるなと苦笑する。

「なーにやってんのよ、任務放ったらかして。」
「あんたこそ火影室抜け出して大丈夫なのかよ。」
「んー、優秀な部下がいるから大丈夫でしょ。」

気まずそうに会話する姿にまた苦笑する。

「名前、目覚める気配ないの?」
「あぁ。それで子供達も不安になってるみたいだ。」
「そこにサクラ連れ込んじゃったんだ?」
「知ってたのか」
「サクラがすごく申し訳なさそうに謝りに来たよ。サスケくんの任務邪魔しちゃったって。」

いつの間に吸うようになったのか、煙草を取り出して火をつける。

「そしたらシカマルが顔真っ青にして、あいつ、もっと前提条件言えよ、とか言い出して。心配になって来てみたんだけどね。来て正解だったよね。」

くつくつと笑ってやると、苦虫を潰したような表情になる。

「どうすりゃよかったんだよ。」
「まぁ、お母さんが目覚めないかもって心配してる子の所に、他の子連れの母親連れてっちゃぁ駄目でしょ。あと、サツキくん、だっけ?あの子は期待してたかもよ。」
「期待?」
「お前が未だ見ぬ父親なのかもって。」
「…知ってたのか。」
「似てるなと思ってカマかけただけだけど、その反応だとそうだったみたいネ。」

表情に全て出てるんだけど、こいつよく今まで忍やってこれたよね。相当参っているらしい。

「女の子ってよく見てるからさ。そんなお兄ちゃんの些細な心の揺れが見えちゃったんじゃない?」

思い当たる節があるのか項垂れる。

「俺、最低だな。」
「でもま、奥さんが不安がってたら取り除きたくもなるよネ。」
「、どうすりゃいいんだよ。」

いつも強気、自信満々な姿は何処にもなく、しょうがないなと心で呟く。

「もう名前に起きて貰うしかないでしょーよ。側から見たら無謀な作戦だったけど、実際それが上手くいっててそれしかないからそうしてたんでしょ、名前だって。」
「無駄な口出しだったってことか。」
「そうでもないんじゃない?子供達も母親の偉大さ分かっただろうし、名前の身体ももう限界だったろうしね。」
「だといいけどな。」
「少なくとも後半は本当だよ。お前が帰ってくる前に健康診断があったんだけど、綱手様が驚いてた。どうやったらここまで身体を酷使できるんだって。見た目じゃ全然わかんないんだけどネ。あの子医療忍術使えるでしょ?それで見た目だいぶ誤魔化してたみたいよ。」

心配そうな愛おしそうな顔をしていて、これならあの子もちょっとは幸せ掴めるかな、なんてちらっと思う。

「まぁ、でもここまでしてでも体力回復させて成し遂げたいことでもあったのかもネ、名前も。じゃなきゃいくら売り言葉に買い言葉でも、あんなに大事にしてた子供を危険に曝さないでしょ。早く起こしてあげたら?」

可愛い可愛い後輩にセカンドチャンスをプレゼントした。