06. 刺客

2人目からは子育てにも余裕が出るとはよく聞くけど、それは本当で、同じように影分身で生活していても以前より余裕だった。いつの間に持ってきたのか、イタチさんに貰ったお金は箱から溢れるほどに増えていて、感謝してもしきれなかった。

「お前がイタチの女か?」

気配も結界も破った様子もなく現れた男に、声にならない悲鳴をあげ、子供達を隠すように立った。

「誰、」

深紅の眼を向ければ面に1つだけ開いている穴から同じ色の眼が見えた。

「心配するな、危害を加えるつもりはない。」

薦めてもないのにリビングの椅子に座ったその人は、茶、とマイペースに言った。

「目的は何ですか。」

言われた通り湯のみを渡しながらそう問うと、一口お茶を啜った。そのお面でどうやって飲んでるんだ。

「写輪眼で傷ついた眼を治せるというのは本当か。」

疑問文だけど疑問形ではなかった。

「治療をしてくれるなら、そいつらに危害は加えない。金が必要なら工面してやろう。いい話だとは思わないか。」
「上手い話には裏があるって言いますが?」
「母親なら警戒心が強いことはいいことだ。」
「素性も知らない仮面の突然現れたうちはを信用しろ、と?」

はっ、と息を吐いて笑うと、さすがイタチの女だ、そう甘くはないか、と言われた。イタチさんの女ではないが、イタチさんの子は産みました、なんて面倒くさいことは言えない。

「いいだろう。なら証拠として侵入がより困難な結界を用意してやる。手付金だな。」

ぱぱっと印を結んだかと思うと、イタチさんが張った結界を覆うように結界ができたのがわかった。

「身の安全は保証してやる。」

信用する義理はないが、子供達の存在がバレてしまっている。相手の能力も分からない。ここは大人しく条件を飲んだ方が良さそうだった。

「…分かりました。子供達に絶対に危害を加えないと約束してくれるなら。」
「決まりだな。」

そう言って面を外す男は、子供達から見えないように坐り直す。

「!」
「驚いたか?」

顔の中央から左右で全く異なる顔に、思わず肩を揺らしてしまった。

「すみません、」
「気にしてない。誰でもそうなる。」

失礼します、と声を掛け右目に手を翳すと瞼が閉じるのが分かった。ブーンとチャクラを当てる独特な音が響く。イタチさんは目の治療ができることを知っていた。それでも誰かに言ったりするかなと疑問に思う。

「なかなか酷使されてますね。ちょっと1回で全て、という訳にはいかないです。」
「そうか。まぁ、無理をさせてガキどもを投げ出させる訳にはいかないしな。」
「ご理解いただきありがとうございます。」
「また来る。」

そう言ってお面の穴に吸い込まれるかのように消えていく姿を見送る。時空間忍術だろうか。見たことない術だった。

「うちはにあんな人いたのか。」

それとも、カカシさんのように拾い物か、と答えの知らない問いを浮かべる。気が抜けたのかどっと疲れる体で子供達の方へ向かった。