09. 晩餐

半分冗談で訊ねたものの息子にあてられたのか何なのか、素直に言葉に甘えられ、結局その日は歪な4人での食事となった。

「子供の好きなものメニューで申し訳ないんですけど、よろしければ。」

そういってオムライスにサラダとスープをつけて差し出すと、ありがとう、とお礼を言われた。

「いただきます!」
「いたーきやす!」
「、いただきます。」

元気なサツキと舌っ足らずなイチカにつられてそう言うと、何処に消えていくのかお皿のものが減っていく。ふと、よくしてくれた覆面忍者の行動に重なって懐かしくて感傷に浸る。

「おじさん、どうやってたべてるの?」

ポロポロとグリンピースだのニンジンだのをこぼしながら面を凝視するサツキに、こぼれてるよ、手元見て食べようね、と声を掛ける。イチカがグーの手でスプーンを持って掘り起こすようにチキンライスを掬う。

「こうやって持つの。ね?食べやすいでしょ?」

後ろから持ち方を修正してやり二人羽織よろしく口に運んでやると、おいち!と叫ばれる。あっという間になくなった隣の皿を見てサツキがスプーンに掬ったスープをぼたぼた落とす。

「サツキ、食べにくかったらカップ持って飲んでいいよ。」

プラスチックの取っ手のついたカップを口元まで持っていくと、我に返ったようにカップを見つめ素直にスプーンを机に置き受け取った。最近離乳食でなくなったばかりなのに手掴みでキュウリをバリバリ食べるイチカを心配して見ながら、完全に注意力が削がれているサツキを気にする。

「おじさん、もうたべたの?」
「あぁ。ちょうど腹が減っていたからな。」

会話に夢中になって手の中で水面がゆらゆら揺れるコップを抜き取って机に置く。

「はやくたべたら、つよくなれる?」

イチカがスプーンで掬おうとしたコーンがオビトさんに飛んでいく。

「あ、」

面に付く前にパシリと手で握るように取ると、何でも無いように目の前の空になったお皿に乗せている。

「すごい!イチカ、もっかいやって!」
「だめ、食べ物で遊びません!」

興奮してイチカを嗾すサツキとスプーンを構えようとするイチカを叱る。残念そうにお皿に目を戻すサツキの頭をオビトさんが撫でる。

「ぽんぽん!」

イチカがこちらを見上げて言う。

「お腹いっぱいになったの?」

遊んでた時間の方が長かったけど、夜お腹空かない?、と汚れた手を拭いてやりながら聞くと、うん!、と元気よく返事が返って来る。チラリ目をやると、サツキが食べる目線に合わせて怪しいお面が何やら話しかけている姿が目に入る。変なこと吹き込んでないだろうな。

「でも、ぐりーんぴーす、きらい。」
「好き嫌いなく美味しく食べるのが強くなる秘訣だぞ。」
「ひけつ?」

小さい子との会話に慣れていない姿に思わず笑みが零れる。案外良い人だったみたいだ。

「まぁいいや、がんばって、たべる。」

いつもお皿の端っこに固めるようにして作られているグリンピースの山にサツキがスプーンを突っ込む。

「嫌いなものは、好きなものと一緒に食べてしまえば、わからない。」

スプーンからグリンピースを減らしてやり、代わりに黄色い卵を乗せている。渡されたスプーンを目を瞑って口に運んだサツキは必死で咀嚼している。ゴクリと呑み込んだ姿を見て、食べれたな、偉いな、と頭を撫でて言うその声は幾分か優しくなっている。その息子の姿にあんなに頑なに嫌ってたのに、と驚いて固まる。別に嫌いなものを無理して食べさせなくても、と強く言ったことはなかったけど、やはり食べてくれると気持ちが良かった。

「サツキ、グリンピース食べたの?」

まだモグモグしている姿に問うと、うん!、と真っさらになったお皿を両手で持ってこちらに見せてくれる。

「そう。頑張ったね。」
「へへ、たべてみたら、たべれた。」

食わず嫌いだったらしく好き嫌いを1つ克服したようだ。

「ありがとうございます。」
「俺は何も。」

照れ隠しなのかそう言うと、また来る、と玄関から帰っていった。