17. 火影室

礼儀正しく出て行った姿を見送ると、何か言いたそうな目線を感じる。

「移住申請の人っすか。」
「そ。面白い奴でしょ?」
「カカシ先生とあんな風に言い合ってる人、初めて見ましたよ。」
「ま、あいつぐらいだよね。恐れ知らずというか、遠慮がないというか。」
「の割には妙に礼儀正しかったっすね。最後なんて他人行儀もいいとこですよ。」

昔から外面が良かったのを思い出す。

「まぁ、あいつも苦労してるからね。」

納得したのか何も言わなくなった部下を見て、山のように積み重なった書類に手を伸ばした。夕刻、突然やって来た教え子に作業を中断する。

「今日から苗字さんって方がメンバーに加わったんですけど、なんか凄くて!」

興奮気味に報告してくる教え子に笑みを返した。

「そう。医療スタッフも人手が足りてないそうだから、良かったじゃないの。」
「そうなんですよ!即戦力とは聞いてましたけど、あんなに凄い方だとは。年も私たちと同じくらいに見えますけど、木ノ葉の方ですか?」
「あぁ。訳あって何年か里を離れてたんだけどね。」
「そうだったのね。」

自分も十分に腕の立つ医療忍者の癖に元後輩を誉め殺す姿に苦笑する。自分の知る彼女は医療忍術よりも瞳術が得意な彼女で、流れた時の長さを実感する。負けず嫌いな奴だから、修行を怠らなかったのだろうか。

「あ、そういえば、苗字さんからカカシ先生にって手紙預かって来ましたよ。」

几帳面に折り畳まれた紙切れを渡される。火影にこんな伝言の仕方をするのはそいつしかいないだろうな、とそっと思った。

「ん、ありがと。何か言ってた?」
「いえ?特には。忘れてたので良ければ届けて貰えませんか、って頼まれただけで。」

外面の良い姿を思い出して、そう、と答える。

「ご苦労様。」
「カカシ先生、休んでる?シカマルが心配してたけど。」
「はは、合間見つけて休むよ。」

休んでると何処からか見つけて飛んでくるのはお前じゃない、とシカマルの顔を思い浮かべながら教え子が出ていくのを見送った。ガチャリとドアが閉まってから手の中の紙を見る。

「相変わらずだーね。」

まだ近くに気配のないシカマルに心で軽く謝って火影室を後にした。