ピンポーン、とドアベルが鳴り響く。
「俺が出る。」
キッチンで動き回っていた母の代わりに立ち上がる。
「はい。」
勢い良くドアを開けると、よ!、と片手を上げて、あの火影岩にもなっている人が目の前に立っていた。
「か、母さん、あ、あの、火影様が、」
動揺して目線もそらせず、思わず母に呼びかけると、全く焦りもせず微笑みながら近寄ってきた。
「来て下さったんですね。」
「ん。善は急げって言うから、早速来てみたんだけど、お邪魔じゃなかった?」
「そんな。私が誘ったんだから、いつでも大歓迎ですよ。」
中へ入ってくる姿をぼーっと見つめる。
「サツキ、ご挨拶した?」
母に声を掛けられ、急いで我に返った。
「あ、すみません、あの、俺、苗字サツキと申します。お会いできて光栄です。」
「あぁ、ありがとう。しっかりしてるネ。」
母さん譲りじゃない?、と言って頭を撫でられ、*が熱くなる。凄い、俺、あの火影様に頭を撫でられてる。呆然と佇んでいると、ゾロゾロと連れ立って来た妹と弟の姿が見えた。
「だあれー?」
「六代目火影様。母さん、凄くお世話になってるから、ちょっとしたお礼に晩ご飯お誘いしたの。」
「ふーん。」
心臓に毛でも生えてるのか、ことの凄さに気付いていないのか、イチカがそう言うと、手洗っておいで、と母の声が聞こえる。やけに素直に洗面所へ向かうのを横目で見送った。
「すみません、この子たち、あんまり来客に慣れてなくて。」
「いや、俺も急に来ちゃったからね。」
そう言って外したマントを母さんが受け取ってハンガーに掛けに行く。いつもそうやっているのかと思ってしまうくらい自然な動きに見えた。困ったように笑いかけてくる火影様を見て、慌てて席にお通しする。
「ん、そんな気を遣わないでよ。火影って言うか、お前たちの母さんの先輩だから、気楽にして頂戴。」
ニコッと笑ってそう言われ、おずおずと席に着いた。
「ほかげさま、どうやって食べてるんですか?」
イチカが不思議そうに訊ねる。珍しく余所行きな妹を変な気分で見る。
「ん、気になる?」
「気になる!」
そ、と言って相変わらずマスクを着けたまま談笑しながら食べるカカシさんを3人で穴が開くんじゃないかと思うくらい見つめた。母さんと何やら談笑している姿は確かに古くからの付き合いという感じがした。
「すごい、本当に火影様が。母さん、何で知り合いなの。」
呟くように溢れた言葉に、ご飯冷めちゃうよ、と声を掛けられた。
「昔、母さんがお前くらいの時に面倒見てやってたのよ。」
いつも通りはぐらかそうとする母さんの代わりに火影様が答える。
「そう、だったんですか。やっぱり火影様って凄いですね。」
「どういう意味かな、サツキ。」
「まぁ、そういう意味でしょ。この歳ながらに母さんのことよくわかってる子じゃない。優秀優秀。」
「そ、そんな、」
「カカシさん、私の子にしては素直で可愛いからってからかわないでね。」
まだ純粋なんだから、と諌めるように言う母。無意識なのか母さんが、カカシさん、と呼んだ。
「ねー、兄さん、ニンジン好き?イチカのあげてもいいよ?」
「イチカが嫌いなだけでしょ。サツキに甘えないの。」
いつものやり取りを始めた2人を、よくも緊張感もなく、と驚きを顔に出す。
「だって、兄さんのもう無くなってるから、あげようかなって、イチカ、善意で、」
「どこで覚えてくるの、そういうの。」
「目の前にいいお手本があるでしょーよ。」
楽しそうにそう言った火影様をこれでもかと、母さんが睨む。よくもそんな目を。
「僕のはカカシさんにあげる。」
「オリテ、自分で食べます。」
マイペースに自分の要望を通そうとした弟を見逃さずに、母がピシャリと言い放つ。
「お前ん家は賑やかだネ。」
火影様に笑いかけられ、嬉しいやら恥ずかしいやらで俯いた。