25. 悪女

カカシさんと話して火影室を出ると、サスケが窓に寄り掛かって待っていた。

「話終わったの?」
「あぁ。」

どちらからともなく隣に並ぶと元来た道を戻る。

「カカシと何話してたんだよ。」
「んー、世間話?」

そうかよ、と不機嫌そうに言われる。サツキが生まれる前の私はこの人を中心に世界が廻ってた。機嫌が悪いと機嫌取らなきゃ、って焦ったし、嫌われるようなことは極力しなかったし、嫌われそうな自分は押し殺していた。でも、もうその必要はない。父さんの許可も取ったし、まさに怖いもの無し。母親は強いっていうけど、それは自分にも当てはまるのかもしれない。

「ついにうちは復興だね。一気に4人人数が増えますが、いかがですか、当主?」

ふざけて問い、こっそりと写輪眼を発動する。

「フン、大貢献だな、お前。」
「でしょ?褒美は奮発してくれいいよ。」
「何がいい?」
「んー、サツキ、イチカ、オリテの修行をつけてほしい。」

そう言うと意外だったと言わんばかりに見られる。

「冗談抜きで、イチカが中忍試験を受ける前にも修行をつけてほしいし、サツキも上忍目指すだろうからどこかで必ず壁には当たるんだよね。サスケばっかにお願いしちゃって申し訳ないけど。」
「それくらい頼れ。」

一つ笑顔を作って、ありがとう、と言うと照れたように笑う。

「そういえば、サラダちゃん、抱っこできた?」
「まだ、会ってない。」

知ってる。でも驚いた顔を作って、会ってない?、と聞き返す。

「あぁ。」
「あぁ、じゃなくて。え?中忍試験前の1週間、家に帰ってたよね。」
「帰ってた。」
「その時は?避けてたの?」
「いや、俺は避けてない。」
「俺は?」
「あいつ、実家に帰ってる。」

口をあんぐり開けて、足を止める。願ったり叶ったりだ、近くで感じた気配に内心ほくそ笑む。

「何やってんの、いや、私がお願いして散々押し付けておいて何だけど、サツキの喜ぶ顔見て幸せ感じちゃってたけど、こんなことしてる場合じゃないでしょ。」
「シカマルにも言われた。」
「言われた、じゃなくて。今から迎えに行って。」
「もう、手遅れなんじゃねーかな。」

何が、と低い声で言うと、驚いた顔をしてから、縋り付くようにこちらを向いた。

「なぁ、俺たち、タイミングが悪かったよな。」

目が合って、どちらも逸らさない。だめ、それくらいじゃ許してあげない。

「ごめん、この何週間か、そこに付け入るようなことした。」

目を伏せ、反省の色を浮かべる。話が聞こえる距離まできた気配にギアをあげる。

「あの紙、視力検査のためだけに用意したのか?」

え、それ言う?こいつ妻の気配に気づいてないのかよ、と驚いて肩が揺れた。自分を落ち着かせるように、髪を耳にかけて落ち着いた声で返事をする。

「そうだよ。」

ため息を吐く彼を見つめて、涙を潤ませる。

「子供たちに写輪眼を習得して欲しかったから、それで、サスケの弱みにつけ込んだの。そうしたら、優しいサスケは断れないでしょ?罪悪感を感じて助けてくれるとわかってた。」

一度も目を合わせずそう言って、私にはあの子たちが一番だから、と付け足す。春野さん、聞こえてる?

「でも、別にサスケに戻ってきてほしいとかそう言うのじゃなくて、ほら、シスイさんだって家族じゃないけどよく遊んでくれてたでしょ?」

流れそうになる涙を我慢して畳み掛けると、イラついている表情が見える。

「うちの子には、他にも、父親、探せる、から。」

その言葉は意外にも自分の胸を痛めつけたようで涙が*を伝った。想定外で自分でもビックリして急いで拭う。

「だから、カカシさんがサスケにしたように、師としてあの子たちに接してくれたら、私はそれで幸せなの。」
「そうかよ。」

本当は家まで送ってくれようとしていたんだろうけど、違う方向に足を向けた姿に安堵する。それは先に動いた気配と同じ方向で、上手くいったかな、と成功を確信した。