08

「苗字さん、最近指輪してますよね。」
「見た!しかも左手の薬指!」
「なんか単にオシャレかと思ったけど、ずっとしてるから、な。」
「仕事しかしてなさそうだったのに、すげー意外。学生時代からの付き合いなのかね。」

相変わらず職場の男だけの飲み会で話題に上る彼女の話を内心ほくそ笑みながら聞き流す。

「なんか後輩から聞いたんだけど、前に近くの居酒屋で会社帰りに男と飲んでたらしい。」

さすがにその言葉には肝を冷やす。見られて居たらしい。幸い俺だとはバレて居ないようで、フォローする必要もなく話が進んで行く。

「え、そうなんだ?だから最近定時で上がってたのか。」
「そういや飲み会にも最近居ないような気がするよな。」
「雰囲気も柔らかくなったし。意外と顔立ち良いよな?」
「何、お前タイプ?」
「そこまでじゃないけど、ふとした時に綺麗に見える、本当だって!」

何やら彼女の印象が変わっているらしく、周りの評価も変わって居て少し面白くない。別の話題に移った会話を聞きながら最近同棲しだした彼女のことを思う。こんなことを言われているとは思っても居ないだろう。そろそろ、いいんじゃないかな、と家の引き出しに入れた重厚な箱を思い出す。世で言うスピード婚かもしれないけど、別に時間をかけたから離婚しないって訳でもないだろう。それに、今までこんなこと他になかったんだから、これからだってこんな風に思うのは彼女しか居ないと思う。だから、帰ったらちゃんと伝えよう。結婚してくださいって。



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「え、苗字さんとカカシさんが入籍?」
「嘘だろ、飲み会でそういう話してる時も何も言ってなかったのに。」
「職場でも特にそんな雰囲気なかったのにな。」
「あ、でも、前に飲み会で、感情に左右されず淡々とこなしてくれる感じが嫌いじゃない、って言ってましたよね?」
「いや、あれはどう考えても上司としてだろ。」
「てか、俺ら何も知らずに当事者の目の前でベラベラと。」