01

「お前、彼氏いないだろ?」

至極失礼なことを言ってのけた彼はサークルの先輩で、呆れた表情を浮かべている。「あんたも彼女いないでしょ?」とは言えないのが悔しい。彼はどこからどう見ても容姿端麗で街を歩けばスカウトされると噂に聞く程だ。彼女の一人二人いて当たり前だろう。なぜそんな彼に冒頭のような暴言を吐かれたのかと言うと、同じサークルの女の子たちとの会話を聞かれていたかららしい。彼氏持ちの子に的外れなアドバイスをしたらしく一瞬場が凍ったのだ。慌ててフォローしたけどその時の会話を聞かれていたのだろう。彼女達と別れた帰り道で声を掛けられた。盗み聞きとは素敵なご趣味で。

「失礼ですね、当たってますけど。」
「やっぱりか。」
「先輩みたいに年中モっテモテな人には分からないですよ。」
「同じ学部の奴と仲良かっただろ。彼氏じゃなかったのかよ。」
「違いますよ。お友達です。」
「シカマルは?よく一緒にいるだろ。」
「奈良先輩は勉強教えてくれる貴重な人脈です。」
「…キバは?」
「キバパイセンは飲み友達です。飲酒同盟組んでます。」
「その中で寝た事ないのは?」

じとりと隣のその人を睨むと意地悪な顔をしている。

「なんですか、先輩ストーカーですか?」
「ってことは全員と寝た事あるんだな。」

図星かよ、ってまた呆れた顔で溜め息を吐かれる。なんだろう、既に落ち込んでたのに追い討ちかけに来たんだろうか。面白くなくて突っかかってしまう。

「気楽な関係、よくないですか?後腐れないし分かりやすくて。先輩だって代わる代わる女の子連れ歩いてるじゃないですか。」
「俺はちゃんと付き合ってる。」
「さらっとモテる自慢しないでください。」
「お前も誰かと真剣に付き合ってみたらわかるんじゃねーの?友達の言ってたこと。」
「…先輩は、あの子達の言ってた事わかります?浮気されたのに自分は一途に想い続けたり、見返りもないのにひたすら尽くしたりしたくなる気持ち。」
「お前と一緒にするな。」
「意外と純愛なんですね。」

何だかんだ慰めてくれてるのかな、と自分の家の近くまで送られながら思う。不器用過ぎて伝わらないけど。

「じゃ、俺こっちだから。」
「あ、はい。送ってくれてありがとうございます。」

頭をくしゃっと撫でて歩き去る背中を見送る。大学から私の下宿先近くのこの大通りまでは不気味に暗くて、最近変質者出たらしいよ、と友達から聞いたばかりだった。さらっとこういう事できるのがモテる所以なんだろうな、と思いながら家へと向かった。