付き合うって皆やってるし簡単なことだと思ってたけど、なかなかに難しいことだったらしい。いつも文句を言いながらも助けてくれる先輩に相談したらそれよりハードルの高いことを要求されてしまった。あんなモテる人を惚れさせるとか世界がひっくり返ったとしても無理だと思う。
「ね、皆どうやって好きな人と付き合うようになったの?」
私以外全員彼氏持ちの友達に聞いてみる。キョトンと私を見つめたかと思うと徐々にその顔が緩んでいく。
「ついに名前も好きな人できた?」
「なんだー、ちゃんと好きな人いるんじゃん。」
「ただのクソビッチかと思ってたけどピュアな部分も残ってたか。」
最後の発言は聞き逃せないけど、皆の顔が予想していたより優しくて驚いた。
「どんな人なの?」
「あ、っと、何かと相談乗ってくれる優しい人なんだけど、彼女がいて。」
「わー、いきなりハードモードだね。」
「でも私も付き合う前、コウタ彼女いたよ。」
コウタとは友達の彼氏の名前で思わず食い付く。
「そうなの?!どうやったの?」
「その時の彼女の相談乗ったり、遊び誘いまくったり、全身で好きですって表現してたなー。」
「やっぱり自分から行かないとだめだもんね。」
「そうそう。」
そういうものなのか、と思いながら聞く。
「名前も自分から押して押して、しないと。」
「そう、なんだ。ありがとう。」
いつでも相談乗るよー、と言ってくれる友達にお礼を言う。まだ彼氏は出来てないけど、前よりは皆との距離が縮まってる気がした。
「いた!先輩!」
走り寄る私に明らかに鬱陶しそうな顔をするのに足を止めて待っていてくれる。
「先輩、めちゃめちゃ上手くいってます!」
「何が。」
「友達に、先輩に好きになって貰うにはどうしたらいいか相談したんですけど、そしたら凄い相談乗ってくれて。」
「仮にも本人目の前によくそういうこと言えるな。」
「なんか前より壁薄くなった気がします!」
「よかったな。」
そう言って見たことないくらい柔らかい笑顔を向けられて、心臓が煩いくらい鳴り出す。先輩と目が合い、顔が熱くなって慌てて目線を外した。下を向けた視界に先輩の靴が入ってくる。
「見惚れてんじゃねーよ。」
わざと耳元でそう言われ、それはもう茹で蛸よろしく赤くなる。そんな私に意地悪な笑顔を向けたかと思うと先輩は背を向け歩いていく。遠くなっていくその背中が見えなくなるまでずっと見つめ続けた。