01

立て続けの任務がようやく終わった。明日は久しぶりの非番だ。ここ最近何かと一緒になる先輩がご実家でのご飯に誘ってくれたのでお言葉に甘える事にした。一人暮らしの私を気遣ってくれているらしくたまにこうして呼んでくれる。先輩に連れられて集落に入るとチラチラとこちらを見る視線を感じた。所々に描かれた団扇のマークが一族の結束の強さを表している。他所者はあまり歓迎されていないらしい。立派な門構えの一際大きなお家に着いて先輩がガラガラと玄関に入る。ただいま、と掛けた言葉を聞くや否や奥からトタトタと走ってくる足音がする。私も先輩に続いて玄関に入りドアを閉めた。走って来た小さな塊は先輩に遠慮なくタックルして流石の先輩も少し後ろによろけた。おかえり兄さん、と男の子が嬉しそうに抱きつきながら言う。なんて可愛い出迎えなんだ。いつ見てもこの光景には癒されてしまう。

「名前も一緒だったの?」
「こんにちは。」
「名前さんだろ。母さんに伝えて来てくれ。」
「はぁい。」

先輩に頼まれてとたたっと走って男の子が中に入って行った。靴を脱いだ先輩が、悪いな、と言いながら私が上がるのを待ってくれている。

「いつもあんな風にお出迎えされてるんですか?羨ましいです。」
「はは、今だけだよ。」

靴を揃えて立ち上がった私を見て彼は中へと誘った。何度か来た事のあるリビングへと入ると先輩のお母さんがいらっしゃいと温かい笑顔を向けてくれた。

「もう少し時間かかるからちょっと寛いでてね。」
「いつもありがとうございます。」
「何言ってるの。家は男所帯だから名前ちゃんがくると華やかでいいわ。もっと頻繁に来てくれてもいいくらいよ。」

そんな風に言って貰える程女子っぽくはないんだけど、ミコトさんは本当に娘のように可愛がってくれるので素直に甘えてしまう。先輩の愛情深さはお母様譲りらしい。いつの間にか足元に来ていた男の子に手を引かれながら移動する。先輩が私達を見て微笑んでいる。

「サスケくん、久しぶり。」

ピタリと止まった彼は上目遣いにこちらを見上げてくる。可愛いなぁ、と思って両手を広げると近寄って来て首に手を回して来た。ハグすると擽ったそうに笑い声をあげる。

「兄さんと任務だった?」
「うん。先輩今日も大活躍だったよ。」
「当たり前だろ。兄さんだもん。」

私から離れて今度は先輩の手を引きに行く。先輩は困ったような嬉しそうな顔をしている。弟を溺愛していると噂されても無理はない。年々酷くなっている気さえするのは気のせいだろうか。まぁ確かに任務で心が磨り減った時にサスケくんの笑顔を見ると生き返った心地がするのはよくわかる。私とは比べられないくらい優秀な先輩だ。いつも忙しそうな彼は余計サスケくんに癒されているのかもしれない。

「ね、時間あるなら修行しようよ。」

可愛らしく誘ってくる弟くんに先輩がたじたじしている。初めてお邪魔した頃はこの光景を見てすごく驚いたのを覚えている。あのうちはイタチを困惑させるのがこんなに小さな男の子だなんて、と。すでに流されそうになっている先輩に遠くからミコトさんの声が掛かる。

「サスケー、修行する時間はないからね。」
「ちぇー。」

残念そうにむくれてその辺に座った。むくれていても可愛いってどういう事だろうか。先輩が眉を下げて、許せまた今度だ、と額を小突いている。

「今度今度って全然見てくれないくせに。」

痛い所を突かれている。疲れを癒すので精一杯だろうから可愛い弟くんの修行を見てやる余裕はないだろう。不憫だなと思った。変われる事なら変わってあげたい。

「先輩、明日はお休みだからサスケくんがいい子にしてたら見てくれるかもよ?」
「ほんと?!」

パッと目を輝かせて先輩を見た。何か言いたげに先輩がこちらを見てくる。

「明日の任務くらいなら私にもできますから。先輩は兄弟水入らず過ごしてください。」
「気持ちは嬉しいが、お前久しぶりの非番だろ。」
「先輩はもっと久しぶりの非番になると思いますけど。」

私が言い出したら聞かないのを知っているのか、すまない、と言って先に折れてくれた。よく状況が分かってないらしいサスケくんが首を傾げている。

「よかったな、サスケ。名前がお前の事大好きで。」
「?名前は兄さんのカノジョでしょ?」

意外とおませさんなサスケくんがそう言うと先輩がゴホン、と一つ咳払いをした。若干頬の赤らむ先輩に苦笑して不思議そうな顔をするサスケくんを抱き上げて膝に乗せる。

「先輩とはお付き合いはしてないよ。」
「そうなんだ?兄さんが家に連れてくるの名前だけだから。」
「、サスケ!」

無自覚に先輩に攻撃するサスケくんと焦る先輩を眺める。

「先輩放って置けない性格だから私の事も気にかけてくれてるんだよ。優しいから。」
「うん。」
「私家帰っても一人だからこうやって呼んでくれるの凄く嬉しいんだ。言った事ないけど、そういうの知っててくれてるんだよね、先輩。」

ふーん、と分かったのか分からないのかそう言う。サスケくんとも会えるしね、と笑いかけるとゆっくり笑顔になった。

「俺に会いたかったらいつでも来ていいよ。」
「ふふ、ありがとう。」

私の膝から立ち上がったサスケくんが私のおでこにキスして来た。お伽話か何かで読んだのだろうか。まさかそんな事されると思っていなかったので固まってしまう。当の本人は恥ずかしそうにはにかんでキッチンの方へ走って行ってしまった。不覚にも顔が熱くなる。

「サスケ、まだ6歳だぞ。」
「わ、わかってますよ!ビックリしただけです!」

それならいいが、と綺麗に笑った先輩とまだ顔を赤らめている私に、ご飯出来たわよ、と声が掛かった。