里外任務があれば手を挙げ、なるべく任務を詰め込んでいた。家に居ると色々と考えてしまうので何も考えずにいられる任務中の方が気が楽だった。五代目火影は綱手様に決まりまた里が活気付き出した。人手不足がちなので任務を詰め込んでいても咎められることはなかった。それを良い事に好き勝手していたからバチがあたったのか、不注意で怪我をしてしまい一日入院する事になった。単独任務だからまだ報告が出来ていなかったからか火影様直々にお見舞いに来た。任務の報告が終わり一息つくと、前に休みを取ったのはいつだ、と聞かれた。綺麗な外見とは一変、睨みを利かせてくるのが怖い。
「一ヶ月前、くらいでしょうか。」
「三ヶ月前だ、バカモン。疲れが溜まっているんだろう。しょうもないミスしやがって。」
しょうもないミス、と言われてしまってもしょうがない。
「そんなに働きたいなら退院したらまた扱き使ってやるから安心しろ。今日は安静にしてろよ。」
それだけ言い残して病室を出て行ってしまった。扱き使ってやる、だなんて恐ろしすぎる。やる事もなくて退屈しているとコンコンと入口がノックされた。返事をすると入って来たのは先輩だった。今日入る予定だった任務で一緒だったから気になって来てくれたんだろう。
「怪我したんだって?」
「もうご存知でしたか。」
「人員変更の連絡があったからな。気になって任務前にちょっと寄ってみたんだ。」
「そうでしたか。わざわざありがとうございます。」
ベッド横の丸椅子に腰掛けると包帯をぐるぐる巻かれた私の腕に視線を注がれた。
「ちょっとヘマしちゃいました。」
「珍しいな。疲れ溜まってたんじゃないか?」
「綱手様にも同じ事言われました。」
「サスケ、会えないから寂しそうにしてたぞ。」
「…その手には乗りませんよ。」
残念、と言いながら笑われた。彼の話ではサスケくんは中忍には昇格しなかったらしい。落ち込んでいてあんなに修行大好きな彼が無気力になっているらしい。珍しい事もあるもんだ。
「気が向いたら顔出してやってくれ。」
「はい。まぁ私で直せるなら先輩に会った時点で直ってると思いますけどね。」
任務に向かうらしく立ち上がった彼にもう一度お礼を言った。また病室に静寂が訪れる。中忍試験、ダメだったのか。まぁ木の葉崩しでそれどころじゃなかったんだから仕方ないと思うけどな。それでも合格者がいなかったという訳ではなかったらしくそれが追い打ちをかけているんだろう。尊敬する兄に早く追いつきたいと頑張っていた彼のことだ。チャンスを逃したと意気消沈するのも納得できる。次の機会は少なくとも一年は巡ってこないんだから。彼の事を考えないようにして任務を詰め込んでいたのに結局こうして考えてしまっているのに苦笑せざるを得なかった。折角だから寝てしまおう、と布団を被る。退院したらまたこき使われるんだ。今のうちに体力を回復させておくに越した事はない。目が覚めると日が傾き始めていた。オレンジ色の光が窓から差し込んでいる。よく寝た、と伸びをしてふと自分以外の気配を感じた。目を開けてそちらを見るとサスケくんで、丸椅子に座ってこちらを見られていた。上体を起こす。いつからそこにいたんだろうか。
「、来てくれてたんだ、」
「具合はどうだ。」
「あ、うん、もう大丈夫。」
先輩がしたように包帯が巻かれた腕を見ている。こういう所は本当に兄弟だ。
「最近、忙しそうだったな。」
「そうなんだよね、綱手様人使いが荒いから。」
自分でそうした癖に何となく気まずくて綱手様を盾に使った。そうか、と疑った様子もなく呟かれた。
「修行見てくれ、って頼まないの?」
「…今はいい。」
苦笑した彼につられて微笑みかける。
「避けられてんのかと思ってた。」
「え、」
膝に肘をついて口元を隠した彼は俯いてそう言った。安心した、というように溜息を吐かれる。実際に避けてはいたので言葉が出なかった。
「ちょっと、意識すればいいな、くらいだったのに、すげー照れられたから、失敗したかと、」
最後に会った日の事を言ってるんだろう。すごい照れられたと言われると恥ずかしい。
「照れるよ、そりゃ。いつもああやって女の子からかってるの?」
「誰にでもやってる訳じゃねーから。」
茶化した私に恥ずかしげも無くそう言われた。意識すればいいな、って、そういう意味だろうか。
「次休みいつ?」
「あー、っと、まだ決まってなくて。綱手様に聞いてみる。」
そうか、と言った彼は寂しそうに笑った。誘われたのを断ったように聞こえてしまっただろうか。
「サスケくんは?休み合わせるよ。」
パッと顔をあげられた。やっぱり誤解させてしまっていたらしい。先輩がいつまで経ってもサスケくん離れできないのも理解できる。私も全然できない。
「明日。あと当分は三日置き。」
「了解。決まったら教えるね。」
笑いかけると少し目を潤ませていて慌ててベッドから降りて彼の方へ駆け寄った。椅子に座る彼の頭を抱えるように抱きしめると肘に手を添えられた。
「何かあった?」
「、いや、」
「私でよかったら聞くよ。」
それには答えずに背中に手を回された。ずいぶん大人っぽくなったと思っててもまだ子供だもんな、と勝手に意識して避けてしまっていた自分を責めた。きっと今までも完璧な先輩には言えないような事を私にぶつけてくれてたんだ。友達にも先輩にも言えない事を。嬉しくて頭を撫でると彼は黙ってされるがままにされている。気付かないようにしてた思いはもう蓋をして置けない程になっている。それを何とか押さえつけて、彼の姉貴分としてでもいいから側にいたいとそっと思った。