「何したんだ?」
退院明け、任務で一緒になった先輩にそう問われた。
「何がですか?」
「とぼけなくてもいいだろう。サスケ、また修行再開し始めたぞ。」
「そう、ですか。よかったですね。私は特に何も。」
疑いの目を向けてくる先輩に苦笑する。本当に何もしてないんだけどな。お見舞いに来てくれて話をしただけだ。信じてないらしいけど嬉しそうに笑う先輩は本当に弟思いだなと思う。
「純粋な疑問なんですけど、先輩、サスケくんに彼女とかできちゃったらどうするんですか。」
「それは応援するさ。心配するな。」
「いや心配はしてないんですけど、小姑になるか泣き崩れるかどっちかなって。」
お前俺をそんな風に見てたのか、と声をあげて笑われる。
「あ、そうだ。私明日非番なんですけど、サスケくんに伝えて貰えますか?」
「あぁ。」
特に追求もされず引き受けてくれた。さっさと終わらせて帰ろう、と意気込んだ甲斐もありその日の任務は順調に進んだ。サスケくんが家に来るのは久しぶりだ。いつも思いっきり部屋着のスウェットで出迎えていたけど、できればもう少しマシな格好で待ちたい。早く寝て備える事にした。思惑通り早起きできて着替えていつもはインスタントのコーヒーを入れる癖に棚の奥に眠っていたコーヒーマシンを取り出した。コポコポと音を立てながらいい香りがする。張り切りすぎだろうか。インターホンが鳴った。玄関に駆け寄って開けると待ち望んでいた姿があって頬が緩む。コーヒーを飲んで、出掛けるか、と言われた。今日は修行するつもりではなかったらしい。二人並んで街を歩くのは初めてな気がする。ブラブラと買い物をしたり最近できたカフェに行ったり、デートみたいだった。
「イタチと付き合ってる訳じゃなかったんだな。」
隣を歩きながらそう言われた。いつの間にか身長が抜かれている。
「う、うん。先輩はよくしてくれる先輩だよ。」
「噂になってたから。」
同期の子が私と先輩が抱き合ってるのを見たらしいと言われた。木の葉崩しの時だろうか。その後サスケくんともハグしたのに、と苦笑した。
「昨日、イタチに言われた。名前はそういう事疎いから噂になってる事すら気にしてないだろうって。」
「…先輩、たまに千里眼持ってるんじゃないかと疑っちゃうよね。」
当たりか、と柔らかく微笑んだ。その顔が格好良くて心臓が高鳴った。気付かれないように平静を装う。
「あと、俺に彼女が出来たらどうするんだ、って聞かれたって嬉しそうに言われた。」
「あ、あれは、なんか、先輩、サスケくん離れとかできるのかなって、気になって、」
「お前は?俺に彼女出来たら、どうする?」
そう言われて、え、と声を出してしまった。サスケくんに彼女?固まっていると少し離れた所からサスケくんを呼ぶ声が聞こえた。
「珍しいな、サスケいつも修行ばっかなのによ。」
「たまにはな。」
同期らしい。仲良さそうに話す近くで女の子が目をハートにしてサスケくんに擦り寄っている。そうか、サスケくん、モテるのか。そりゃああれだけ格好良かったらモテるよな、と今まで考えた事もなかった事実に少しショックを受ける。彼女が出来たら。例えば、今目の前にいるような同年代の子とサスケくんが仲良さそうに街を歩いていたとしたら。私はどうするだろうか。先輩みたいにすぐに「応援するよ」と言えないのがいじらしい。話が終わったらしく、悪い、と声を掛けられた。
「ううん。同期?」
「あぁ。騒がしい奴らだろ。」
「ふふ、いい友達だね。」
笑顔を向けるとひどく優しい顔で見つめられた。
「ごめん、変な事言った?」
「いや。」
それから家まで送ってくれるというので来た道を戻る。楽しい時間はあっという間とは言うけど、こんなにあっという間に過ぎなくてもいいのに。家が近づいて来て寂しさを覚える。
「サスケくんに彼女が出来たら、」
途中になっていた会話を再開する。彼は気になるのか窺うように見て来た。
「なんか、寂しい。」
「…それだけか。」
え、と言葉を詰まらせる。結構本音ぶっちゃけたんだけどな。彼は立ち止まったかと思うと恥ずかしそうに目を伏せた。
「俺は、名前に彼氏が出来たら、奪いに行く。」
一度私の方を見て来た目と目が合った。奪いに行く。その言葉に鼓動が速くなる。何も言わない私を置いて先に歩き出した。思い出したようにそれを追いかけて隣に並んだ。
「じゃあ、彼氏、出来ないように、見張ってて。」
「見張るだけでいいのか。」
掛けられた言葉に彼の方を見ると意地悪く笑っている。いつかも見たその表情に頬が熱くなる。
「、出来ないように、そばにいて?」
ほとんど自分で言わせたようなものなのに彼は今更恥ずかしそうにした。
「まぁ、そこまで言うなら。」
「…言わせた癖に。」
フンと笑うと手を繋がれた。そっと横顔を盗み見ると赤くなっている。慣れたようにサラリとされたけど彼も照れてるらしい。少し安心した。当分サスケくん離れは出来そうにないな。繋がれた手をしっかりと握った。