「わー、優しそうな人だね!」
彼氏の写真を見せた時の反応だ。10人中8人が同じ反応。残りの2人は、大事にしてくれそうだね、とか、誠実そうな人だね、とか。まぁ、見せられた彼氏が大してイケメンじゃなかった時によく言うコメントだ。それでも私は全然構わないし気にならない。短くケータイが鳴ってメッセージが届いたのを確認してほくそ笑む。彼からだ。ボイスメッセージを再生する。
『今日早めに帰れるから、夕飯俺が用意するよ。』
なんて事はないメッセージだ。普通にテキストでやり取りした方が早いかもしれない。それでも彼は毎回ボイスメッセージで送ってくる。
「ただいま!」
「おかえり。」
部屋から掛けられた声に頬が緩む。そんな私の姿に彼が苦笑する。
「顔ニヤけてる。」
別に声フェチって訳でも無いんだけど、何故か彼の声が異様に好きなのだ。低くクリアに響く彼の声が。直接聞くのももちろん好きだけど、イヤホンで聞くのは囁かれてるみたいでもっと好き。そんな訳でメッセージはボイスメッセージで送ってくれるよう彼にお願いし、彼はそれに毎回付き合ってくれている。
「メッセージ聞いて早く帰らなくちゃって急いで帰ってきた。」
「そんだけ喜んでくれるとこっちも録音しがいがあるよ。」
呆れたようにそう言ってご飯出来てるよ、と声を掛けられる。家庭的で優しくてよくできた彼氏だ。友達の言った「優しそうな人だね」は実際大正解である。
「これ。」
ご飯中にプレゼントを渡されて、今日って何か記念日だったかな、と思い返す。
「ちょっと早いけど、誕生日祝い。」
「え!ありがとう!開けていい?」
「もちろん。」
そのもちろんの言い方がこの上なく好き、と思いながら包みを開ける。出てきたのは目覚まし時計だった。
「目覚まし?」
設定を見ると1分後にセットされている。ちょうど時間になったのだろう、アラームが音を出した。
『名前、朝だそ、起きろ。』
「きゃー!待って!もう一回!」
アラームを止めずに待っているとスヌーズでもう一度喋り出す。
『起きろ。遅刻するぞ。』
きゃっきゃと喜ぶ私を余所にアラームを止められる。
「あ、」
「さすがに恥ずかしいから。」
耳まで真っ赤になって口元を隠している。これ録音する時、どんな感じだったのか物凄く気になる。
「俺の声、好きなんだろ?喜んでくれた?」
「もちろん!もっかい聞きたい!」
だめ、と目覚ましを取り上げられ寝室に持って行かれる。
「ね、じゃあ、俺の声好きなんだろ、ってもっかい言って?」
「変態。」
騒ぐ私を放って洗い物をしに行った後ろ姿を目で追う。変態、って言ったその声も好き。