リビングでイヤホンを付けている私を不審に思ったのか、怪訝そうな顔を向けられる。一緒にいる時は彼の声が聞きたくてなるべく近くに居座るくらいだから不思議だったのだろう。
「何聞いてんの?」
「この前送ってくれたメッセージ。」
「…何回も聞くの?」
明らかに嫌そうな顔をしたから慌てて誤解を解こうとする。
「違うの、これはお気に入りで。ほら、イヤホンで聞くとね?耳元で言われてるみたいで、なんか、好きで。」
は、と自分が誤解を解くどころか墓穴を掘っていることに気付いて口を噤む。そろそろと彼の方を見ると呆れているのに優しい顔をしていた。
「もうだいぶ慣れて来たけど、つくづく変態だよね。」
そちらを窺うように見つめる。あ、また溜息つかれた。
「変態って言われて喜ばないでくれる?」
「ご、ごめん。その声と相性良すぎて、つい。」
「何、相性って。待って、聞きたくない。」
「ごめん。」
シュンと三角座りしてイヤホンを外す。自分でもキモいなと思うもんな。他人なら尚更そう思ってるだろう。落ち込んだ私を見て隣に座ってくる姿が見える。優しいし理解あるし本当最高の彼氏だと思う。声も格好いいし。
「ごめん。私もキモいなと思うんだけど、なんでか。」
「だんだんエスカレートしてる気さえするよ。」
「今まで別に声フェチって訳でもなかったのに、何故か急に開花したようで。」
「自覚あるんだ。」
「一応。」
ふっと表情を緩めて頭を撫でてくれる。包容力もある。いい彼氏だ。
「電話してる時もソワソワしてるもんね。」
「うん。」
「じゃあ耳元で言ってあげようか?」
「うん。…え?!」
彼がくすりと笑ってから近寄ってくる。耳元に顔を寄せると息がかかるかかからないかの距離で低く、変態だな、と言って来た。言葉にならない声をあげて目を白黒させる。
「なんか、そんな顔されると、いけない事してる気分になる。」
「十分いけない事でしょ!破壊力すごすぎ!」
余韻に浸りながら彼の方を見つめる。彼も自分でやっておいて恥ずかしかったようですぐ顔が離れていく。
「今日は、もっかいやって!って言わないんだ?」
私の真似なのか一部口調を変えて言われる。その言葉に思い出したようにケータイを開いてメモ帳を出す。
「え、あ、いいの?じゃあ、今度はこれ読んで。」
画面を見た彼の顔が赤くなる。それでも自分が言い出したから責任を感じたのか、おずおずと顔を寄せてくる。
「名前、好きだよ。」
かぁっと顔が熱くなって近くにあった胸に飛びつく。驚いたようで一瞬間ができたけど、すぐ背中に手を回してくれた。
「わ、私も。」
おでこを擦り付けた目の前の胸から相当早い鼓動が聞こえてきた。
「もう二度とやんないから。」
明らかに動揺してる声に思わず声をあげて笑った。