「この前、間違えて妹にボイスメッセージで送っちゃった。」
「え?」
「なんか最初は恥ずかしかったけどさ、文字打ち込まなくていいの意外と楽なんだよね。」
「そうだったんだ。普段から音声認識使う人もいるぐらいだもんね。」
「あー、その気持ち分かるな。言うだけでいいって楽。」
「妹さん、何か言ってた?」
「いや?何も。どうしたの急に音声とか、嫌がらせ?って言われた。」
「…ごめん。」
謝る必要ないだろ、とけらけらと笑う。それは「何も」には入らないと思う。
「ほら、中国の人とか打つの大変だから録音メッセージでやりとりしてるだろ?」
「そうなの?」
「うん。だからそのうちこれがスタンダードになるかもね。」
「ふふ、時代の先取りだ。」
彼とのチャット履歴を眺めて、彼からは録音メッセージが送られてきてるのに自分からはテキストで返してる歪な画面が見えた。
「名前、コーヒー飲みたい。」
ケータイを覗き込んでると急に耳元で言われてケータイが手から滑り落ちた。派手な音を立てた方には目も向けず両手で耳を塞いで立ち上がった。
「コ、コーヒーね、了解。」
不意打ちはやめてほしい。未だに普通に会話してても良い声だなと思ってしまうくらいなのに。ある程度空気を通ってきてくれないと心臓がもたない。バクバクいう心臓でコーヒーを差し出すとありがとうとお礼を言われる。
「ケータイ、壊れちゃうよ。」
「さ、さっきのは、驚かせてくるから、」
コーヒーを飲みながら差し出すケータイを受け取る。可愛げなく言い訳するも意に介した様子もなくコーヒーを飲んでいる。
「今日、名前の作ったご飯、食べたいな。」
耳元で聞こえた言葉にデジャヴよろしくケータイを落として立ち上がる。
「あ、うん、何がいい?」
慌ててキッチンに向かった姿に声を上げて笑われる。
「そこまで言いなりになられると申し訳なくなるんだけど。」
「、あの、自分では気付いてないと思うけど、その声、すっごく格好いいからね。」
「ん。そうらしいから、わざとやってる。」
驚いて彼の方を見ると薄っすら微笑んでコーヒーを啜っていた。その姿に恥ずかしさが増す。
「ひ、卑怯者!人の弱点を、」
そう言いながら準備の手を止めない私にまた声を出して笑われた。