1LDKのマンションに二人で生活してみると意外と不便を感じる事があった。1人だと贅沢なくらい広かったのに、ベッドを2個並べるスペースはない。手を広げて寝られると思って買ったセミダブルのベッドは肩幅の広い彼に占領されている。着替えるときには洗面所まで行かないと落ち着かなくなったし、どこのドアを開けるのも必ずノックしてから開ける。それでも誰かと食卓を囲むのは楽しいし、体温の高い彼の熱が布団越しに伝わってくるのは嫌ではなかった。朝起きて隣にいれば安心するし、楽しそうに笑いながら話してくれるのが嬉しかった。
幸せだった。
それでも、もっともっとと求めてしまう自分が嫌になる。先に眠った隣の綺麗な寝顔を見つめる。こんなに近くにいるのに。結婚式で一度触れただけの唇を見てしまう。契約ルールを思い返して、双方の同意の上であれば身体的接触可、という固い言葉を取り出す。結婚式でのキスは「双方の同意の上」だった。もう一度「双方の同意の上」になるにはどうすればいいのだろうか。面と向かって頼めば快諾してくれるのだろうか。追加料金を払えばいいのだろうか。誰かに疑われたりして契約が破綻しそうにでもならないとしてくれないのだろうか。そこまで考えて急に虚しくなってくる。必死でどうすればキスして貰えるか考えるなんて、寂し過ぎる。涙が零れた。それでもなお目の前の少しの距離を気にしてるなんて、私はどこまでも欲張りだ。