仕事だから失敗しないようにしてくれているのは分かっているけど、彼は自分が居なくなった時のことを考えてくれている。新婚旅行もそう。写真撮影のこともそう。全部全部いなくなるからそうしてくれる。それは有り難い事なのに必ず終わりが来ると突きつけられているようで、どこか切ない。
「よし。1箇所目はここだな。」
週末、写真撮影ツアーと称して関東の観光地を回ることになった。彼が運転してくれていた車にはお互い各シーズンの服を積んでいる。新婚旅行の時よりも一緒にいる時間が長くて打ち解けたからか、彼が気を遣わなくても自然と笑顔を向けれた気がした。季節外れな服を来た時には周りの人達に変な目で見られ、お互いに顔を見合わせて笑った。私の髪型を変えるため途中で美容室にも寄ってくれた。一つ、また一つ、彼が計画してくれたスケジュールを消化していく。
「ここで今日は最後だな。疲れたか?」
「ううん。ファッションショーみたいで凄く楽しい。」
安心したように微笑んでカメラを向ける。たまに彼が間違えて自分のケータイで撮って、私のケータイを渡して撮り直す。近くの人に声を掛けて撮って貰う。彼もファッションショーに出たモデルの気分にでもなったのか、撮って貰うときに手を繋いできた。驚いてそちらを見ると困ったようにカメラの方を指差される。慌てて笑顔を作って、撮ってくれている人の掛け声を聞く。カシャっという機械的な音が鳴る直前、繋がれた手が持ち上げられて柔らかいものが触れた。極自然に目を向けると彼が恋人繋ぎした手に唇を落としている。視界に捉えた瞬間顔が熱くなる。カシャっともう一度シャッター音が鳴って彼が離れて、撮影を頼んだ人の方へ歩いていった。
「すみません。」
「い、いえ、なかなか綺麗に撮れたと思いますよ。」
紳士的に謝りながらケータイを受け取る彼に、撮ってくれた女性が*を赤らめて答える。写真を確認して嬉しそうに笑うとお礼を言って戻ってくる。少し前に離れた手が恋しい。
「赤くなりすぎ。こっちが恥ずかしくなる。」
恥ずかしそうにそう言って頭を掻く。差し出してきたケータイを確認すると何枚か連続で写真を撮られていた。驚いた私が振り返る躍動的な写真。まだ状況を飲み込めていない私の手に彼が綺麗に微笑んでキスする写真。顔を赤くして見上げる私を手に唇を近付けたまま優しく見る写真。
「幸せそうな写真だろ?」
余計に顔が熱くなって思わず口を手で隠した。何も言ってないのにその様子を見て優しく笑う。心臓が壊れるんじゃないかと思うくらい速く脈を打っていた。私、彼のこと、好きになっちゃったみたいだ。