時の流れは早いもので、あっという間に契約期間は残り一週間になっていた。先週末撮った写真を加工するという彼にデータを渡しておくと、2日もしないうちにできたと言ってパソコンの画面を見せてくる。
「すごい!ちゃんと紅葉になってる!」
画面に程よく赤くなった木々が並んでいて、思わず感嘆の言葉が出た。映画のポスターとかみたいに人工的な赤じゃなくて程よく染められている。
「それはよかった。」
他の写真も見せて貰って春夏秋冬それぞれの写真が整ったのを確認する。
「もしかして、本業は画像編集とかやってるの?カメラマン?」
何気なく言った言葉が宙を舞った。深入りした質問にはっとして慌てて謝る。
「ごめん。…ありがとう、写真。」
「あぁ。」
短くそう言うとパソコンを閉じて部屋を出て行った。彼のことは何も知らない。何も。殆どここで暮らしているようなものなのに、私物も置いて行かない。私が自分の物のついでに洗濯すると言っても断られる。布団も最初新しく買おうとしていたのを止められた。
「俺に関する物は増やさない方がいい。」
それは居なくなった後に辛くなるからだ、と言われなくても分かった。最初は自分が好かれる事が分かっているみたいで、なんて自信家なんだと思ったけど、結局のところ彼は正しかった。手元のケータイに入っている写真がなければ彼が此処にいた証拠なんて無いも同然だ。もうずっと一緒にいて彼の事を知った気になっていたけど、私は全然何も知らない。