またしても彼に頼る時が来た。学生時代の友達が結婚式の写真だけでは飽き足らず、実際に会いたいと言って来たのだ。男っ気の無かった私が一番に結婚して疑っているのかもしれない。彼に聞いてみるね、と言ってその場を収めて相談した。
「顔出すくらいなら大丈夫だろ。むしろ今週中でよかったな。」
意外にもあっさり引き受けてくれて女子会について来てくれた。さすがに申し訳なくて、一時間で抜けるからね、と友達には事前に念押ししておく。
「え!すごいイケメンじゃん!何があったの?貢いだの?」
当事者を前に不躾に燥ぐ友達に彼が笑う。
「写真見せて貰って格好いいなと思ってたけど、こんなイケメンだったなんて。そりゃ会わせたくないよね、ごめんね。」
良いように解釈してくれたらしく謝られる。彼は質問責めに遭って適当に答えている。設定は最初の一週間に二人で作り込んでいる。特に心配はしていなかった。
「じゃあ名前と同じ職場だったんですね。」
「あぁ。」
「名前の職場って結構キラキラした部署もあったよね?なんで名前だったんですか?」
悪い子じゃないんだけど、この子は絶対失言で身を滅ぼすと思う。さすがにそんな事を彼に答えさせる訳にはいかず慌てて口を挟む。
「いいでしょ、選んでくれたんだから。私たぶん前世で段違いに徳を積んでたんだって。」
彼が隣で吹き出すように笑う。
「今まで男運なかったから心配してたんだよ。貯めてたのかもね、運。」
他の友達もフォローに回ってくれる。残念な恋愛事情が彼にバレてしまったのがなんか悔しかった。
「えー、聞きたかったな、惚気話。」
「カナはいつか自爆すると思うよ。」
「こんな事友達に言ってくるんですよ?どこが好きなんですか?」
どうしても聞きたいらしい様子に他の子も宥める側に回ってくれる。その光景を見て彼がそれまで噤んでいた口を開いた。
「まぁ、ソツなく仕事こなして他の人の事助けんのは得意なのに自分の事となるとどこか抜けてんのが、なんか放って置けなくて。」
驚いて彼の方を向いた。友達が女子高生みたいにキャーキャー言うのが聞こえてくる。当の本人はなんでもないと言うようにコーヒーを啜っている。
「そういうとこあるよね、昔から。よかったね、ちゃんと分かってくれる人で。」
「名前、顔真っ赤!」
「もうこっちまで恥ずかしくなるって。お幸せに!」
そろそろ時間で、すみません、と紳士的に言う彼に手を引かれて店を出た。店を出てとっくに手は離れたのに、握られていた所だけ発熱したかのように熱い。
「そこまで照れられるとこっちまで照れる。」
「ご、ごめん。なんか、予想してなかったから、びっくりして。」
「心配してくれてたみたいだな、男運ないの。」
「そ、こは忘れてくれると嬉しいかな。」
「前世で徳積んでて良かったな。」
ニヤリと効果音が付きそうなくらい意地悪な顔を向けられる。初めて見たその表情に彼の素顔を垣間見た気がした。すぐに思い出し笑いをした彼の背中を思い切り叩く。
「でも、ありがとう。」
どういたしまして、と言ってまた思い出し笑いをした彼に呆れながら二人で家に向かった。