09.それでも幸せだったよ

家に着くとまだ契約終了まで時間があった。

「写真、送るから連絡先教えろ。」

そう言われて連絡先を教えてすぐURLが送られてくる。

「結構量多かったから、リンク先にあげてる。」
「ありがとう。」

確認しようと開くと写真共有サービスのようで195という数字が画面上部に表示されていた。写真の枚数だろう。確かに多いなと思った。

「もう少し時間あるけど、やり残したことは?」

写真を確認しようとしていた所にそう聞かれる。

「んー、特に思いつくことはないかな。本当ありがとう。」
「役に立ったなら、よかった。」
「ちなみに、この写真はいつまでは使っていいの?1年は大丈夫?」

彼のプライベートを気にしてそう訊ねると一瞬寂しそうにした。

「使えるなら気が済むまで使ってくれていい。」
「え、そんな感じでいいの?私は凄く助かるけど。」
「まぁ、悪用するような奴には見えなかったし。」
「そっか。ありがとう。」

頷いて腕を広げてくる。首を傾げると困ったように笑って此方に寄ってきて抱き締められた。

「淡白だよな。俺の方が別れ惜しんでそう。」

聞き慣れた声が耳の近くで聞こえてどんどん鼓動が速くなる。彼に聞こえてないといいな、と思った。

「なんか実感沸かなくて。たぶんそっちは慣れてるんだろうけど、私こんなに誰かと過ごしたの初めてだったから。」

体をすっぽりと包まれたまま左右にゆっくりと揺すられ、笑みが溢れる。体が離れていって見慣れた位置にある目と目が合う。

「俺も、こんな感じで依頼受けたのは初めてだ。」
「そうなんだ?」
「普段は1日デートとか長くても何泊か旅行とか、そんな感じ。」
「どうでしたか?1ヶ月夫体験。」
「変な感じだな。会って一週間で結婚式って。」
「日本一スピード婚だろうね。」
「言えてるな。」
「…なんで、引き受けてくれたのか、聞いてもいい?」

何となく聞けなかった事を最後だからと聞いてみた。

「真剣だったから。こういうサービス利用するのって自分が寂しいからとか周りに良く思われたいからってのが多いのに、家族を安心させたいからって言われて興味が出た。」
「そうだったんだ。安心、させれたと思う。おばあちゃんに嘘でも結婚式見せてあげれて本当よかった。」
「そういうとこ。隣で寝てても襲われねーし、飯に怪しいクスリ入れられもしねーし、変な要求してこねーし。」
「なんか、今までどんな依頼受けてきたのか、聞かなくてよかったかも。」

はは、と声を出して笑って恥ずかしそうに頭を掻いた。

「…俺、お前のこと幸せにできたか?」

何気なくそう聞かれた。結婚式までしたから気になったのか、契約期間終了前に聞く決まりなのか分からないけど、しっかりと目を見て言われた。

「うん。幸せだったよ。ありがとう。」

そう言われて笑った彼の顔も幸せそうでつられて笑った。