3

轟々とすべてを炎が燃やしていく。あの子は逃げることができただろうか、死にゆくわたしはそれだけが気がかりで、燃える炎の中でもう少しも手足が動かせず、祈るような気持ちでいた時……気がつくと、目の前にはまた、あの燃える翼を持つ鳥がわたしの傍らにいる。

火の鳥——それは、静かにわたしを見下ろしていた。

「あなたは死んだのですよ」

鳥の声はどこか哀しげだった。

「同じように、これからもきっとひどい目に遭うでしょう。終わらない死が待っているのですよ」

わたしは息を呑んだ。火の鳥の言葉の意味が、胸に重くのしかかる。

「それはとても恐ろしいことなのです」

火の鳥の瞳は、どこまでも深く、すべてを見透かしているようだった。
そう、わたしはまた死ぬのだろう。そして、その先にもまた死が待っているのだろう。
それでも——

「それでも、まだ会いたいと願うの?」

火の鳥の問いに、わたしは迷わず答えた。
もちろんだ、と頷くわたしに火の鳥は静かに目を閉じ、炎の翼をひとつ羽ばたかせた。

「なぜ?」

……きっと、今、大変な目に遭っていると思うから。若君は、一人で苦しんでいるかもしれない。追われ、行くあてもなく、どこかで怯えているかもしれない。すぐにでも、会いに行きたいのです。

火の鳥はしばらく黙っていた。
そして——

「わかりました」

そう呟いた途端、わたしの身体はまた光に包まれた。炎に焼かれるような感覚のあと、気がつけば、わたしは再び人間の姿になっていた。




目の前には荒れ果てた地が広がっており、かつて若君の屋敷があった場所は、すでに焼け落ち、黒く焦げた瓦や柱の残骸が無惨に転がっていた。人々はすでに散り散りになってしまったのか、そこにいたはずの家臣たちの姿も、誰ひとり残っていなかった。

「若君……」

わたしは呟き、そして、歩き出した。

どこに行けばいいのかもわからない。ただ、若君がどこかで生きていると信じて、わたしは彷徨い続けた。道中は過酷だった。室町の世は乱れており、戦に敗れた者たち、身を持ち崩した者たちが溢れていてわたしは何度も襲われた。金も持たず、身を守る術も持たぬ女が、無事に歩ける場所などどこにもないのは当然だろう。不幸だとは思わない。人間とは虫とはまた異なる儚い命なのだとその時に知ったからだ。

「助けてくれ」
「食べ物をよこせ」

荒んだ瞳の男たちが、わたしの腕を掴んだ。容姿のせいなのか、貴族の娘と間違えられたのか、わたしは幾度となく危険な目に遭った。着ていた衣は奪われ、道端で倒れたこともあった。
それでもわたしは立ち上がった。

わたしは知っている。火の鳥が言っていた言葉の意味を。
わたしの運命は、これからも死と苦しみの繰り返しなのだ。
それでも、若君に会うためなら、それがどれほど過酷な道であってもかまわない。
わたしは、ただ若君を探し続けたかった。ただ、会いたかった。

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