#12


私たちの《開けて!》という声も虚しく、トラックのエンジンがかけられた。それと同時に冷たい空気が一気に入ってくる。二人で助けを呼ぶけれど、外からは全く応答がない。とりあえず一度落ち着いて、少しでも寒さをしのぐため身体を縮こませて段ボールで身を包んだ。


『さ、さむい…』
「まつげ、凍ってます…」


2人でガクガクと震えると、急に車体が揺れた。そのまま動き出し、何処かへ向かうようだ。


『時間計って、』
「はい…」
『ああ、もう、なんで携帯…!』


こんな時に限って携帯を落としてしまった自分が憎い。本当にバカ。携帯さえあれば位置情報も何もかもわかるかもしれないのに。


『手紙を書いて…飲み込む、』


このまま何もしないでいると、きっと犯人に殺されてそのまま終わる。きっと亡くなった彼女もそう思ったんだ。近くにあったメモ紙を震える手で手繰り寄せ、必死の思いでペンを握った。


『この状況で書いたんだ、暗闇で凍えながら…必死で助けようとしたんだよ!』
「名前さん、」
『花ちゃんを…見つけてくれることを願って、』


久部くんが、後ろから自分の使っていた段ボールをかけてくれ私を少しでも温めようとしてくれる。寒くて手がかじかんで、思うように字が書けない。動け!私の手!!


『彼女たちを…好きにして良い権利は、誰にもない、』


手をさすって、少しでも熱をあげる。同じように久部くんも手をさすって、私の手に重ね温めてくれた。そうこうしているうちに、トラックが止まった。と、同時に揺れの反動からか自分の鞄の中身が出てきてしまった。


「とまった、時間…18分」
『あ!!!あった!!!携帯!!!』


なんでしっかりと確認しなかったのだろう。いつも上着のポケットに入れてるからそうだとばかり思っていたけれど、不意に鞄の中に入れていたのだろう。すぐにスマホを操作するけど、寒さのせいか反応が悪いし、電池なんて残り3%しかない。とりあえずラボの誰かに連絡を、と祈るような思いで電話をする。


『お願い…!だれか…!』


ものすごく時間が長く感じる。今の時間なら、まだ定時ではないはずなのに誰も出そうな気配がない。なんで、早く、誰か!


『あ!!ミコトさ、』
「三澄は帰った」
『切らないで!!切らないで!!切ったら一生恨む!!呪います!!』


電話に出てくれたのは中堂さんだった。切ろうとした電話を慌てて止める。今こうしている間もトラックが動いているのがわかるけど、なんだかとっても嫌な予感がしていた。


「何を非科学的な」
『蝶塚から車で18分のところにいます。久部くんと一緒にトラックの冷凍倉庫に閉じ込められました。』
「犯行現場か?」
『そうです。』
「スマホの現在地は?」
『充電切れそうで、調べられません、!』


現在位置がわからないと、電話しても意味がなかったかもしれない。でも、何か。きっと、ラボの人なら、中堂さんなら探り当ててくれるのではないかと思ったのだ。携帯に早く気づいていれば…とまた後悔した矢先、トラックが大きく動いて走り出す感覚が。


『え?なに、』
「どうした?」
「、っ、名前さん!!」


トラックが大きく転がり、車内が揺れる。身体ごと吹き飛ばされるようにバランスを崩した中、久部くんが必死に私を抱えてくれて、私も彼の身体にぎゅっと抱き着いたのだった。




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