#16




《せーの!》と言いながらスマホをフルフル振っているミコトさんと久部くんを見つめる。ミコトさんはやっとガラケーからスマホにしたらしく、連絡先交換をするにあたって今のこの行動に出ていたのだ。


「あ、そういえば名前もスマホ変えたんでしょ?」
『水没させちゃったんでね。ミコトさんとは違う機種なんですけど』
「えー、そうなのー?一緒のにしたら良かったー」
『私のは久部くんと同じやつなんです』


コーヒーを一口飲んで、さて、仕事するか!とスマホを白衣のポケットに入れる。ん?なにやら視線が私に刺さっているのは気のせいだろうか。


「へえ、同じなんだ」
『ん?なんですか、夕子さん』
「いやー?良いんじゃない?お揃い」


そう言いながら久部くんと私の肩をポンポンっと叩いて、夕子さんは仕事に取り掛かった。なんだ、その意味ありげな言い方は。チラッと横にいる久部くんを見ると、頭を抱えて溜息をついてるところだった。





「三澄さんにお願いがあるんですけど!この事件知ってます?」


所長がミコトさんに検察側の証人として裁判に出て欲しい、とのお願いが。その事件とは、主婦ブロガー殺人事件、と言われ亡くなったご遺体は半年前UDIラボで解剖していた。


「でしたら、中堂さんの方が良いと思います。私実は裁判経験ないんです。」
「代理証人なんて死んでもやるか。俺は他人の鑑定を信用しない。」
『っていうか、中堂さんは無理なんじゃないですか?』
「そう!そもそもね、中堂さんは出廷させられないんだよ」


私と所長の言葉に、中堂さん以外のみんなが何故?という顔をしているのがわかった。あ、そっか。あの事はまだ私と所長しか知らなかったのか。


「態度が悪いからですか?」
「おい!」
『それもありますけど』

「中堂さん、今訴訟抱えててさ」
「訴訟?」
「訴えられてるって事ですか?」
「え、誰に?」


皆、驚きの声で口々に疑問が出てくる。そりゃそうだ。中堂さんが訴訟を抱えてるなんて。しかもその内容的にはラボに影響しかねないのだ。


「坂本さん」

「「「坂本さん?!」」」


最近、坂本さんを見かけていない事、三澄班の人たちは気づいていただろうか。坂本さんは中堂さんからのパワハラを受けたとして訴えを起こしているため、出勤していないのだ。所長からの説明を受けるため、私も訴訟内容を詳しく書類で見せてもらったのが数日前の出来事。


「中堂班を3日で辞めようとした人はいたけど、訴えた人は初めてですよー」
「坂本さん、ガッツありますね」
『ほんと、その手があったか!って感じですよね』


ミコトさんがどうするのか尋ねると、中堂さんは無視すると宣言。無視するわけにはいかない所長は困りまくっているのが目に見えてわかる。事情が事情なので、結局証人としてミコトさんは出廷することになった。


『あ、検察の方今日来られるんですよね?私、まとめてある調書用意しておきます』
「ありがとう、頼むね、名前」


この証人としての出廷が、大変なことになるのはもう少し先の話。



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