解剖結果をみんなで整理するため、ホワイトボードにペンを走らせていた。書きながらも、頭の中は何故、という文字で埋め尽くされている。名無しのななこちゃんこと、花ちゃんは一体どこで、どうやって凍死したのか。
『一酸化炭素の濃度が低すぎますよね?』
「そう。3人が自殺してから警察が来るまでの間に、あの部屋のドアを開けた人間がいる」
「他に犯人がいるってこと?」
『それが一番しっくりくるよね』
夕子さんと久部くんが、いろんな仮説を立てる。犯人探しは後にして、花ちゃんがどこで凍らされて、なにを伝えようとしたのかを究明しなくちゃならない。
『うわ、いてっ』
「お前、この間の調書どこやったんだ」
『え、中堂さんのデスクに置きましたよ?』
「そこらへんに置かれてもわかるわけねーだろ。探偵ごっこも程々にしておけ」
ホワイトボードを見つめていると、丸めた資料で中堂さんに頭を叩かれた。ちゃんとこの間の調書は出したし、なにより中堂さんのデスクが散らかっているのが悪いと思う。
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『え、どういうことですか?』
「所長はやれる事はやったって言うけどさ」
翌日、所長と入れ替わりにラボへ入ると、落胆した顔のミコトさんと久部くんが見えた。その理由を聞いて私も唖然とする。花ちゃんの遺体は何事もなかったことにされるらしい。イラついた様子でバナナを食べるミコトさんから、私もバナナを受け取って口に頬張るけど、味なんてわからなかった。
『久部くん、今日バイク?』
「はい」
『温泉行こっか』
「はい?」
『温泉。気分転換に。』
バナナを食べ終えて、自分のデスクにある鞄へ荷物を入れていく。頭からたくさんのハテナが出ているであろう彼は、これから…?と不安そうだ。
『そう。私今日、午後から半休取ってたし』
「名前、それじゃあコレ」
そういった私にミコトさんが色々なキットを手渡した。お願いね、と声をかけられ返事をする。いまだに動こうとしない久部くんを焦らせるように目を合わせると、
「水着持ってないんですけど」
『え、なんで水着?』
ここにきて、また彼の天然ボケが出てきたのだろうか。今度は私とミコトさんの頭からたくさんのハテナが浮かんできたのだった。
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