肥後ずいきの効用-sidestory-



 西の里に到着をして蜜月を過ごす事になった二人。その蜜月の場所は西の里から少し離れた山の麓にある一軒の屋敷であった。


 風間家の使用人が先に届けておいてくれた荷物の紐を解き始めた千鶴が中身を確認していると、何やら見覚えのある包みが現れた。


「これって……」


 千鶴が目を見開きながらその包みを取る。確かこの中身は道中の間に使用期限を超えて使い物にならなくなったはず。それなのにここにあるという事は――。千鶴は今は別の部屋にいる風間の名を大声で呼んだ。


「どうしたというのだ?」


 風間が大あくびをしながら呼ぶ声がした部屋に入ると、目の前には顔を真っ赤にさせている千鶴がいた。手にはあるものが握られており、それを見た風間がほうほうと首を上下に振った。


「これは肥後ずいきではないか。見るのは道中以来だな」
「こ、これを荷物の中に入れたのは千景さんなんですか?」
「俺ではない」
「嘘っ! だってこれを知ってるのは千景さんしかいないじゃないですか? あの時、せっかく俺が買ってやったのに使用期限を切らしおって……お前がすぐに抱かせないのが悪いとか文句を言っていたじゃないですか。その嫌がらせじゃないんですか?」


 千鶴が手に持っていたものを風間の方に投げ付けると、足元に落ちたそれを拾った風間が溜め息を吐いた。


「これは肥後ずいきだ」
「それくらい知ってます!」
「これはあの間の宿の名物の方ではなく、こちらのもの。鬼の間でも子ができにくい為に、夫婦の間ではよく使われておる」
「へっ……?」
「西の里では頻繁に使用されているものだ。恐らく相模が入れたのだろう」
「相模さんが……?」
「ああ、あの婆のする事だ。子を作る為に必要な性具を入れ忘れるわけがなかろう」
「何だ……千景さんの嫌がらせじゃなかったんですか。良かった……」
「ふん、俺のあれはそのような性具に頼らんでも十二分にお前を快楽の頂まで昇らせる事ができる」


 風間はそう言うと、その性具を千鶴の方に投げ付けてきたが、それを受け取った千鶴がジッと見つめている。


「どうした?」
「これってどう使うんですか?」
「使い方を知らんのか?」
「知るわけがないでしょう? あれは一度も使いませんでしたし、あの後の千景さんは……」
「だから、それに頼らんでも十二分に……」
「わ、分かってますから! ただ使い方だけ知りたいんですけど……」
「それは今宵教えてやろう」


 風間が機嫌よく千鶴の願いを聞き入れてくれる。それに対して素直に喜んだのは良かったのだが、


「ただし、実践でな……」


 そう言われた千鶴の口元は引き攣りを起こし、風間はさも楽しみだとニヤニヤとした笑みを千鶴に投げ付けていた――。




 夜、全身に風間の愛撫を受けた千鶴が息を荒げる中、何やら身体の上で風間がもぞもぞと動いている。


「千景さん……何をしているんですか?」
「ん、今はめているところだ」
「何をですか?」
「肥後ずいきをな……」
「あっ……!」
「ぬるま湯で湿らせてから使うものだ。少し時間が掛かる」


 千鶴が時間がかかるのならばそれはもういいと伝えようとした瞬間、風間の塊が千鶴の中に侵入を始めた。


「じ、時間が掛かるって言ってませんでした?」
「先ほどから湿らせてあったのだ」


 初めはゆっくりと突いてくるそれの動きは、いつもと同じ感覚で気持ちが良くなってくる。しかし、そのずいきの効能はすぐに表れ始めた。


 むず痒いような感覚が生じ始めた途端、千鶴の中で何かが弾けるようでいて一気に熱さが加速を始める。


「あっ……ああああぁっ! す、すごぃっ!」


 千鶴が身を捩らせ、布団の敷布を掻きむしる。言いようもない快感が何度も脳天を突いた。


「だ、駄目えええぇっ! あああぁあっ! ああっ! あああはぁあっ!」


 いつもなら控え気味な喘ぎ声しか出さない千鶴が無遠慮な声音を出し続ける。そして風間の下で身悶える動きは激しさを増していた。それに加えて、風間の塊にも変化がある。一度出したら暫くの間は萎えているその塊りが、出た瞬間に再び勃起を始めたのだ。何度も見ていた代物ではあるが、自分には必要がないと感じて使った事がなかった風間は、


「これはなかなかのものだな……」


 と、身悶え続ける千鶴を見つめながら、満足げな笑みを浮かべていた。


 千鶴の白い肌が朱に染まる。そしてその上から汗の粒が浮かび始めていた。それを見るだけで疲れていると分かるのに、身悶えの激しさは納まらない。風間が何度も突く度に、千鶴は布団の上で艶のある美しい踊りを披露してくれた。


 最後、風間が律動を速めると、千鶴の動きもそれに合わせてくる。


「いっ、いぃ……っ! あっ……はっ、あっ、はあっ……あはあぁぁっ!」


 何度も喘ぎ続けた後に意識を失った千鶴を見つめながら風間は呟いた。


「ふむ……これはなかなかいい代物だったのだな。これから先が楽しみになりそうだ」


 そしてにやりと笑んだ風間は、何度も行った艶事の疲れを癒す為に両瞼を閉じた――。


 その肥後ずいきは蜜月期間だけの数が入っていたのだが、翌日の夕方には大量のそれらが風間と千鶴の許に届けられた。


「こ、これをどうするつもりなんですか?」
「なかなかの代物であったが、里の屋敷に戻ってこれを使えば、お前のあの激しい喘ぎ声は里中に響くだろうからな。今の中にここでやり倒そうと思ってな」
「や、やり倒すって……」
「しかし、これを持って来た者たちが言っていたぞ。昨夜のお前の喘ぎ声はこのような麓からでも里の方まで聞こえていたらしい」
「なっ……何ですって?」


 あまりの恥ずかしさで千鶴の顔が勢いよく燃え上がる炎のように真っ赤になる。そのような千鶴にも構いもせず、風間は肥後ずいきについての感想を述べた。


「いやしかし……このような代物を使って楽しいと思ったのは初めてだ。この西の里に戻ってからというものの、俺の周りでは飽きる事が全くない」
「ち、千景さん……」
「それにこんなにも大量に持って来るとは、朝昼晩を存分に楽しめと言っているようにしか思えん」
「千景さんっ!」
「さて千鶴、やるか」
「えっ、い、今から……?」
「当たり前だろう。今からならどの部屋が良いか……」



 風間はそう言うと、肥後ずいきを数十本手に持ち、嫌がる千鶴を抱きかかえると、軽い足取りで行為をする部屋へと姿を消して行く。その後には千鶴の悲痛な叫び声が響き渡り、暫くしてから強烈な喘ぎ声がその屋敷の中を震撼させていた――。


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