目覚めは情事の後の甘い口付けで-sidestory-
「千景さん、起きて下さい」
千鶴の起こす声が聞こえるが、西の里に戻ってからの風間はかなり多忙で、朝はなかなか目覚る事がない。寝返りを打ちながら顔を顰めて寝ぼけ声で言葉を返してきた。
「もう少し寝かせてくれ」
「でも、今日も会合だと天霧さんが言っていましたよ」
千鶴が風間の身体を揺さぶるが、それでも風間は起きようとはしない。
「後、少しだ……後……少し……」
寝返りを打った場所は先ほどまで千鶴が寝ていた為に、少しの暖かみと千鶴の身体から醸し出される女鬼特有の良い香りが風間の鼻腔を突いてくる。その香りが心地好く、風間の眠りは再び深い底へと潜っていきそうになったその時、風間の唇に優しく触れる、これまた温かく柔らかく、そして甘い香りを感じる。まだ眠たさの残る両瞼を押し上げると、目の前には風間に口付けをしている千鶴の顔があった。
もう数えきれない程の口付けを交わしているというのに、朝のこのそれは千鶴にとって、まだ恥ずかしいようで軽く触れるものである。だから風間は、片手を千鶴の後頭部に回して自分の顔の方に強く押さえつけた。
「んっ……!」
濃密な口付けが交わされる中、風間のもう片方の手が千鶴の腰布に向かっていき、器用な手付きでそれを解いていく。少しだけ互いの唇が距離を持った時、千鶴が時間と広間で待機している天霧を気にした言葉を放つ。
「ち、千景さん……もう起きないと……」
「まだ、時間はある」
「でも、天霧さんが……ぁっ!」
「待たせておけばいい」
腰布を解いている途中の風間の手に自分の手を添えて制止をする千鶴。しかし、このような行為は毎朝の事であり、風間は何とも気にしていない。くるりと身体の向きを変えると、布団の上に横たわらせた千鶴に再び濃厚な口付けを与え始めた。
外に漏れ出るのではないかと思われるくらいの大きな吸音を鳴らし、千鶴の胸元に朱に染まる痕を残していく。形良い両の胸は、道中よりも膨らみがかなり大きくなっていた。
胸の先端を何度も吸い上げた風間が、千鶴の股の間に指を這わせていくと、その個所は既に十分な湿り気を作り上げている。這わせた指で少しの刺激を与えると、千鶴の身体が小さな痙攣を一つだけ起こした。
情事の最中は全身が燃えるように熱くなる。二人の身体からは汗が滲み出して潤いを生じ始めた。
喉元に吸い付きながら千鶴の股を割って自分の下半身を潜り込ませた風間は、それの中央にある大きな塊を既に湿り気十分な穴の入り口に押し当てた。
初めはゆっくりと、そのうちに少し激しく大きな塊を穴の中に突き入れていく。それを繰り返す度に、千鶴の身体が上下に激しく揺れた。塊の全てが千鶴の中に包み込まれた時、互いの口元からは小さな溜め息が漏れる。風間のそれは、塊が千鶴の温もりを感じた喜びであり、千鶴のそれは、風間の塊が違和感もなく差し込まれて気持ち善がるものであった。
風間の腰の律動が始まる。それに合わせて千鶴の腰も揺れ始めた。
風間の目の前には着物の前だけを開いたままの千鶴の淫らな姿。全裸ではなく半裸なその姿が何とも言えず艶めかしい。
風間が激しく上下に揺すぶる度に、千鶴の身体は着物と布団が擦れる音と共に舞い踊る。風間の両腕を掴んでいた千鶴の両手が離れて、それは布団の敷布に宛がわれた。
白い敷布が皺を作り上げる。それを掴んでいるだけでは不安定だったのか、千鶴の両手は次に風間の腰に宛がわれた。
千鶴の身体の上に自分の全ての重みを乗せていく風間は律動の速さはそのままに、千鶴を包み込むように抱き締めた。
小さな喘ぎ声が断続的に放たれる。あまりの気持ち良さに身体を捩ろうとするが、風間の重みに負けてそれをする事ができない千鶴が小刻みな痙攣を起こし始めた。
足袋をつけたままの千鶴の両足が天井に向かって伸びる。それが左右に広がり、風間の塊をもっと奥へと誘ってきた。両足が開かれた事によって中が浅瀬を作り、風間の塊は容易に最奥へと突き進む事ができる。
もっと奥へ――風間の塊の先端が千鶴の穴の突き当りに何度も衝突を起こすと、左右に広がっていた両足が硬直を始める。すると、千鶴の穴の中に収縮が起こり始めた。
声にならない喘ぎ声を、大きく開いた口元から吐き出す千鶴。既に快感の絶頂に登りつめているようだが、一度しか味合わせない風間ではない。何度も何度も快感の大小の波を起こして千鶴の意識を現と夢の中で浮遊させる。
脳内に痺れが起こり始めた千鶴の両の蜜色の瞳の焦点が合わなくなっていく。目尻からは悦びの涙が零れ落ちて、最後には大きな硬直を起こした。
天井に向かって伸び、その場所で硬直していた両足が布団の上にばたりと音を立てて落ちる。そして風間の腰に宛がっていた両手もまた布団の上に落とされた。
荒息の中で小さな喘ぎ声が不定期な間隔で放たれる。快感の余韻を浸っているのか、千鶴の穴の中では未だに収縮が生じていた。その中に風間の持つ塊の先端から熱くねっとりとした液体が心音と連動して送り込まれる。それが全て出し終わった後に引き出してみると、風間の塊の先端と千鶴の穴の入り口との間に白い糸が尾を引いていた――。
「千景さん、起きて下さい」
少しの間、意識を虚ろにさせていた千鶴が風間の黄金の髪の毛に触れる。そして、次には大胆な口付けを風間に与えてきた。それは濃厚で風間が酔い痴れてしまいそうな程の甘い口付け――。それが終わった後には風間は完全に目覚めて布団から身体を起こす。
「ああ、そうするか……」
未だに口付けに慣れない千鶴。しかし、情事をした後の千鶴は何故か大胆な女に変化する。それが楽しみで、いくら仕事が詰まっていようとも、会合に遅れようとも――。それに天霧にネチネチと愚痴を言われようとも、情事の後の千鶴の深みのある口付けをもらわないと風間の一日は始まらない。
だから――
風間はそれだけは怠るような事を一度もしなかった――。
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