05
「あー、そろそろ寝るか!」
エースがぐっと伸びをして体をほぐす。
隊長の仕事だろうか?
珍しくも机で書類と睨めっこしていた彼は意外にも真面目だった。
気が付けばもう日は沈んで外は真っ暗で。
「シロー。寝るぞー。」
「……ワゥ。」
さぁ、今日も気まずい夜がやってまいりました。
05 体温
ぎしり、と音を立ててエースがベッドへと潜り込む。
流石隊長様と言ったところだろうか。
白ひげの隊長格にはそれぞれ個室が与えられているらしい。
もちろん、ここはエースの部屋で。
くぁ、とあくびをした顔は、先ほどまで書類整理をしていたからか、酷く眠そうだ。
「ほら、何してんだよ。さっさと来いって。」
「キュー……。」
ばさりと上布団を広げて私をベッドに迎え入れる気満々なエース。
……実は、ここに来た初日からずっとエースの部屋で寝ていたりします。
いや、あの、その、ちょっと聞いてください。
初めはかなり抵抗したんです。
私は初め甲板で寝ようとしたんだけど……。
さすがに甲板で寝かせる訳にはいかねぇってことになったようで。
(いきなり嵐とか雪とか雨とかサイクロンとかあるもんだから)
それじゃあ、と物置に行こうとすればエースに呼ばれて……。
気が付けばエースの部屋に入れられて。
「今日からここで寝ろよ!」と満面の笑みで押し切られてしまった。
(Oh、my、god……。)
しぶしぶエースの寝顔が見えない位置の床で寝ようとすれば、これまた邪魔されて。
私をベッドの中へと引きずり込んだ。
そりゃあもう抵抗しましたとも。
エースと同じベッドで眠るなんて冗談じゃない、私の心臓が持ちませんよ、えぇ。
しかし、当のエースは酷く眠かったのか……眠気の不機嫌と相まって、物凄い迫力で。
「こ こ で 寝 ろ 。」
もう半分しか開いてない目で不機嫌MAXなエースにそうやって迫られてみてくださいよ。
無理だから。超怖いから。
押し切って床で寝るなんてできなかったから。
しかたなく、しぶしぶベッドへと上がり込めば……。
満足そうに笑って、ふにゃり、と表情を崩したエース。
……悶えない訳がない。
それから私はエースの抱き枕になってしまっているわけですハイ。
「シロ。……早く来ねえと怒るぞ。」
「わふ……。」
のそり、とベッドに上がり込む。
すると、優しく体に巻き付いてきたエースの腕。
(あああああもう心臓に悪い!)
「あー…やっぱあったかいな、お前。」
「クゥン?」
「俺、メラメラの実食ってから自分が火だから、あんま暑さって感じなくてよ。」
それでも、お前はあったかいって感じるんだよなぁ。
なんて、寝惚け眼でへらりと笑ったエース。
……それは、アマテラスが太陽神だから、だろうか。
エースは……自分じゃない、他の生き物の温かさを感じて…安心、しているのだろう。
なら……我慢、するしかないじゃない。
すり、とエースにすり寄る。
エースは独りじゃない、と。
船にはたくさんの家族がいる、今だって…こうして私が傍にいるよ、と。
知って欲しくて。
「キューン。」
「ははっ!珍しいな、シロが甘えてくるなんて。」
「わふ。」
「ん……。ありがとな、シロ。」
穏やかな眼で、エースにお礼を言われて……。
酷く、胸が締め付けられた。
(おひさまのように笑う人は)
(本当は)
(とても寂しがりで)
(平気そうなふりをして)
(いつも自分以外の温かさを求めている)
(一人ぼっちの子供の様だった)
ひとり、なんかじゃないのにね
05 END
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ゆめうつつ