HappyWhiteDay2
Happy White Day
カラ松の場合
「やあハニー、今日は来てくれてありがとう」
『来て早々にライブ終わりの歌手みたいなこと言うんだね…』
カラ松に呼び出された。今日も変わらず、革ジャンにキラッキラのズボンで周りの視線を独り占めしている。
おまけにこういうキザなセリフを平気で吐くから、何も知らないその辺の人は後ろを振り向いてまでこちらを見てくる。私も向こうの立場なら同じことをしそうだ。
呼び出された先は公園。何の変哲もない、普通の公園。
目立って賑わっているわけではないがちらほら人がいる。子供もいる。この状況の中、この格好の人に後ろ手に隠された赤いバラの花束をキザなセリフと共に渡される身にもなって欲しい。カラ松には一生わからなさそうだけど。
花束、隠すくらいならその大きさにするのは間違っていると思う。後ろに抱えてたってはみ出てるから。余裕で見えてるから。
「今日はお前にこれを渡そうと思って」
『……、うん』
「俺の愛を伝えるにふさわしい、情熱的な赤いバ」
『わかったからなるべく早くして、こういうことするんならほんとにウチでやってお願いだから!帰り道はカラ松が持って歩いてね!』
「えっ、喜んでもらえなかったか…?すまん……」
『嬉しいけど恥ずかしいから!通りすがりの人にめっちゃ見られるから!』
「なんだ照れてるのか?フッ、まったく留衣は照れ屋さんな」
『早くして』
「はい…」
いくらプレゼントを貰う側でも、カラ松のことが好きであっても、申し訳ないが羞恥心の方が優先度が高い。
さっさと終わらせて帰りたいというのが本音である。
形だけでも受け取ろうとして手を伸ばしたら、その先でカラ松が咳払いをした。
「留衣、バレンタインありがとう。
こんなんじゃとても伝えきれないが…ずっと、愛してる」
『…!』
急に真面目な顔になって、彼はそのまま手に持っていた赤いバラの花束を私の手に持たせた。
場所がこんな公園じゃなくて格好もビシッとしてたら良かったのにね、なんて。
いろいろともったいないカラ松に思わず笑ってしまう。
「………、へへ…」
私が笑ったせいなのか、はたまた自分で言っておいて自分で照れたのか。
顔を真っ赤にして頬を掻くカラ松から「ありがとう」と言って花を受け取ったら、近くにいた子供がヒューヒューと私達をはやし立てた。
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