HappyWhiteDay5
Happy White Day
十四松の場合
「あーーー!!留衣発見ーー!!」
帰宅途中、背後から突然大きな声がしてびっくりする。
幸い誰もいない道路のど真ん中だったから良かったものの、近所迷惑であることは免れない。
うるさいと思われていたら申し訳ないと思いつつ足を止めて振り返る。どこかで待ち合わせるべきだっただろうか、でも私から持ちかけるのは違う気がするんだ、今日に限っては。
「留衣留衣!!留衣ー!!」
『聞こえてる!聞こえてるから!』
「留衣これ!!お返し!!」
叫びながらこちらに突っ込んでくる十四松に思わず身構えたが、彼は目の前まで来るとそこで止まった。
続けて頭の上に乗せていたプレゼントボックスを差し出してくる。やけに大きい箱だな。
『ありがと。なんだか大きいね』
「うん!留衣チョコ好きでしょ?いーっぱい詰めてきた!」
『そうなんだ、ありがとね』
「あとねあとねー!見て見てこれ!手紙も書いた!!」
私のことはお構いなく、というかそれよりも手紙とやらを見せたい欲の方が強いらしく、私が抱えた箱のリボンをせっせと解き始める十四松。
両手がふさがっているのでそれをただただ見守ることしかできない。
箱から紙を一枚出した彼は目の前でそれを広げて見せる。
「だいすき!!」
平仮名で“だいすき”とだけ大きく書かれた白い紙。
手紙というよりかはメッセージカードに近いけど、そのたった一言に込められた気持ちの重さは、数秒後に理解することになる。
「留衣あのね、すっげー好き」
『…うん』
「ほんとのほんとに、すっげー好きなの」
『うん、ありがとう』
「野球よりも大好き」
『野球より?』
「うん」
突然彼らしくない表情をした彼が、ついさっきまで大声で叫んでたとは思えない声色で「好き」を連呼し始める。
道のど真ん中だけど、そんなことは全く気にしていない。
ときどき。
ときどき、十四松はこの甘ったるい声で告白してくる。未だにどうすればいいかよく分からない。
だから毎回とりあえず“ありがとう”と頭を撫でる。そうしたら数十秒後には元の十四松に戻るから。
「また一緒に野球しよーね!!」
『うん、いいよ』
今回も違わず元に戻った十四松と並んで帰り道を辿る。
彼が常に連呼している野球よりも好かれているのかと、箱に戻された手紙を見ながらそう思った。
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