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『ん…』
ケータイの目覚ましのベルが朝を知らせる。
当然耳障りなその音は早く消したくて、手を伸ばして止めにかかる。
『んんー…?』
動けない。なんだか知らないけどがっちりホールドされていて動けない。うるさいから早く消したい。
なんだこれ、と思いつつそういえば昨日カラ松が遊びに来て(語弊)、寝るとこないから一緒に寝ることになったんだっけと思い出した。
じゃあこれは何か。カラ松の腕以外の何物でもない。視界が暗いのはなぜか。カラ松とゼロ距離だから以外の理由が思いつかない。
片腕だけでしかも寝てるのになんでこんなに力があるんだよ。
『あのー、カラ松さーん。寝てて良いんで目覚ましを…せめて目覚ましを止めさせて……』
――というか私普通に今日も学校だからあんまり寝てるわけにもいかないです。
怪我を悪化させないよう、怪我をしていない方の腕や肩を軽く叩く。
叩いたり揺すったりしてるうちに次第にカラ松から反応が返ってくるようになった。
「うーん……むにゃ…」
『ちがーう!逆!わたしは起きたいの!!』
「んー………ん!?」
『お』
「離れてくれ」の意味を込めてるのになぜか引き寄せられたので寝起きの頭で頑張って抗議した。逆だ。
ようやく気付いたらしい彼は状況を呑み込んだのか、パッと手を離してくれる。目覚ましは既にけたたましく鳴り響いていた。
「すすすすまん留衣!!ふっ不可抗力というかあのその」
『んあ?いや別に何でもいいよ起きれれば……わたし支度して学校行ってくるからカラ松は寝ててね〜』
目覚ましを止めてあくびをしつつベッドから這い出る。普段ならここで雨戸を開けて明るくしてるところだけど、カラ松がいるからそれはいいや。
クローゼットから適当に服を引っ張り出して、カバンも持って部屋を後にする。
今日は彼のご飯も用意しておかないといけないから早めに行動しなくては。
家にあった間に合わせで申し訳ないが、朝食と昼食をテーブルの上に広げる。飲み物の場所、帰る時間、暇だったらテレビ見てだの漫画読んでだの、何かあったら電話してだの。そういうことを適当にメモに書いてテーブルに一緒に置く。
夕飯は後からどうにでもなるけど、できるならそれまでには家に戻って欲しいところ。仲直りは早いに越したことはないし、お母さんも心配してるだろう。
せかせかと化粧を済ませて、一旦カラ松の元へ戻る。
寝てたらそのまま出ていこうと思ったが、ベッドに近付いたら彼は目を開けた。
『行ってきまーす。戸締りしとくよ。
メモ置いといたから見てね。家帰るなら鍵置いとくから、それで玄関鍵かけて。わたしは別に持ってるから大丈夫』
「……うん、ありがとう。行ってらっしゃい」
へにゃっと笑ったカラ松は寝ぼけてるのだろうか。普段のサングラスかけてカッコつけている彼とは全然違う表情をした。
こういう素が見れるからカラ松に構うのはやめられない。
鍵をかけて家を出る。
いつもとやってることは変わらないのに、何となく今日は感覚が違うように思えた。
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