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『なに、そんなにわたし酷い?』
「酷いっていうか…それはまたそれで都合いいんだけど」
「難しいよねぇ」
『うーん、どうしたもんかね』
「男として見てるつもりなら、弟にはやらないことをしてみるとか」
「…それ、内容によってはまずいんじゃないか?」
「具体的には?」
「十四松的に、弟にはしなさそうなことって何?」
「え?えーっとね……手繋いでデート、じゃダメか。いつもと変わんない。
じゃあちゅーするとか、あっあとセク」
急に話を振られて少し焦るも、“弟にはしないこと”を思いついた順に並べる。
弟にしないことって要するに、家族同士じゃ普通やらないこと、ってことでしょ。
知識としてしか知らない単語を並べていたら、右隣でガタリと物音が聞こえた。
――ちゅ、
「……えっ、え、」
ぐいっと引っ張られた感覚はあった。
酒が回ってたせいか、はたまたぼうっとしていたせいか、大した反応もできずにそのまま雪崩込んだ感覚もあった。
右の頬に柔らかいものが一瞬だけ触れて離れる。
びっくりしてそっちの方を見たら、目が合った後に何故か頭を抱える留衣。
『あー…』
「…っ、?」
『思ってたよりダメだねコレ…』
「………!!!」
僕から目線を外して、肘をついて片手だけで頭を支えるような体勢の留衣の顔は赤かった。
もう数年の付き合いなのに初めて見せたその照れと焦りと色気が混ざったような表情に、ぐらりと視界が揺れる。
『酔ったかな、ハハ』
「お前のはただのオレンジジュースだろい、バーロー」
『雰囲気と匂いで酔った。ごめんわたし帰る…チビ太、全部合わせていくら?』
「払ってくれんのか?お前が払うことねーのに」
「お前らぶっ倒れた十四松について何かツッコミはないの!?」
おそ松兄さんの声と僕が倒れた豪快な音が遠くに聞こえる。
頬の感触はまだ残ったままだった。
人生で初めて人にされたキスは、僕がずっと前から恋してきた大好きな人からだった。
恋する十四松 1
(…留衣、顔真っ赤だったね)
(レアなもん見れたけど全然嬉しくない)
(…こいつ起きたらもう一回絞め技食らわすわ)
END.
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