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風呂入って、ご飯食べて。
いつも姉と二人でやってる生活を、今日出会った女の子とその母と過ごす。
旅行に行ってるみたいでもあるけど、そんな呑気な旅ではない。

一日のやることが大体終わった後、乃亜は「宿題やるから」とノートを広げ始めた。
どうやら明日までにやらなければいけないらしい。
覗いてみたが、数字ばっかりでよく分からなかった。
特にやることもないオレは、シャーペンを走らせる彼女をぼーっと見ていた。


午後10時過ぎ、
乃亜は朝は6時に起きなければいけないらしいので、そろそろ寝ると言い出した。
大体予想してた、一日の最後に発生する問題。
慌てて乃亜に言う。




「あ、オレはソファーか床で寝るから…」


『それじゃ風邪ひくでしょ』


「でも……」




そうする以外になくないか。
そう思って反論すれば、隣から別の声。




「いいじゃない、乃亜。
ベッド、一人じゃ多少広いんだから頑張って二人で寝なさい」


『「え」』


「お母さんと乃亜で寝てもいいけど、それじゃあねえ……」




にやにやしながら、乃亜の母が乃亜を見る。
まだ誤解は解けていないらしい。

乃亜はどうすればいいか考えていたらしく、母からの予想外の提案に困惑している模様。
多分、乃亜は自分と母の二人で寝るからどっちかのベッドを貸すとか言おうとしていたんだと思う。
この中で男はオレ一人だし。


母親の顔色を伺うが相変わらず。
言っても聞かないと判断したのか、乃亜がしぶしぶ頷いた。




『………分かった』


「い、いいのか?乃亜…」


『…翠が嫌じゃなければ』


「オレは嫌じゃねえけど……」


『おやすみお母さん、…行くよ』


「お、おう……おやすみなさい、」


「うふふ、おやすみ!」




スタスタと歩いていく乃亜。
やばい、オレのせいで不機嫌そうだ。




「乃亜、」




階段を上がって二階にある乃亜の部屋に入る。
そういえば初めて入った。
いろいろ気になるけど、今はそれどころじゃない。


ぼふっとベッドに座る乃亜。
急いで顔を覗きこむ。




「乃亜、ごめ」


『…ごめんグリーン』


「え?」


『こうなるとは思ってたけど……もしあれだったら私が床で寝るから…』


「ばっ、んなことできるわけねーだろ!
乃亜が平気なら一緒に寝させてもらうから…嫌だったらオレが床で寝るから。な?」




大体、同じベッドで寝ることになって困るとしたら乃亜の方だ。
かなり打ち解けてるとはいえ、今日が初対面。
オレは家族でも親戚でもない。
同性ならまだしも。

邪魔してるのはオレだし、片方が床で寝るのならオレが寝る。
男としてそこは譲れない。




『じゃ、……一緒に、寝よ』


「お、おう……」




身長の違いにより、見上げつつ言ってくる乃亜。
やばい、その角度やめて欲しい。
思わず視線をそらす。


ベッドの奥に乃亜がもぐり、反対側にオレが入る。
お互いに背を向けた状態で、オレが電気のスイッチを切って暗くする。




『おやすみ』


「おやすみ…」




そのまま目を瞑る。
枕は一つしかないので、オレがクッションを借りた。
乃亜が遠慮したけど、やっぱりオレが譲らない。
乃亜は枕で寝ろ、と半分押し付けるような形で。


同じベッド、離れてるといっても高が知れている。
すぐには寝付けそうにない。
やっぱりオレ、違う意味で床で寝たほうが良かったんじゃ…。


寝転がって数分経ったとき、乃亜がごそごそしだした。
ちらっと横目で見ると、寒いのか小さく丸まって腕を手で擦っていた。

もともと一人用のベッドに二人がくっつかないように寝てるんだから、かなり端っこと端っこになる。
夜は昼間より冷える…一人用の布団しかかけていないのだから、端にいれば寒いのは当然だ。




「乃亜、寒いか…?」


『ん……』


「嫌じゃなければこっち来いよ?
あ、べ、別に何もしねえからな…オレならいいけど、乃亜が風邪ひいたら困るし…」


『……』




もともとオレがいないはずなんだ、オレが何とかしないと。


声をかけて呼んでみると、意外と素直にこちらに来た。
背中を向けたままだけど。
手を伸ばさなくても届く程度に距離が縮まる。




「あの、嫌だったら言えよ…?」


『!』




近づいてきた乃亜にくっつくように手を回す。
いわゆる抱き寄せる動作……正直危ないと思う、自分でも。
下手すればセクハラに当たる。
でもあっためるならこれが一番手っ取り早い。

一応断りだけ入れておく。
嫌だったら突き飛ばしてくれて構わないと思ってる。




『……グリーン』


「ん?
ごめん、やっぱり嫌だったか…?」


『……んーん…。
…そっち、向いていい…?』


「お、おう」




ごろ、と寝返りを打つ乃亜。
背中合わせだったのが、向かい合わせになった。


どきり。
一気に心臓の鼓動が速くなった。
乃亜は目を瞑ったままだから、オレが視界に入ることはないけど。


ふと、昼間の台詞を思い出す。
「好きだから」。



途端にばっと顔が熱を帯びる。
薄暗くて見えないと思ったけど、なるべく顔を隠したくて乃亜を抱き寄せる。
でもそれが余計だったみたいで、胸辺りにかかる息でさらに鼓動が速くなった。

やばい、寝れない、これ。



なんとか寝ようと、必死に目を瞑るオレがいた。




『……グリーン』


「ぅえ!?な、なんだ?」


『具合でも悪いの…?』


「…へ?」


『息、上がってるというか……。
どっか痛いとかだったら言ってよ?』


「っ!?
だだだ大丈夫だぜ…!?」


『そ?
……あと、力…ちょっと、強い…』


「!?
ごごごごめん!!」


『…さっきからどうしたの…』


「べべ別に!なんでもねえから!」


『ならいいけど…』




やばい超怪しい、オレ。

無意識に力を強めてたみたいで、慌てて緩める。
おやすみ、と呟いた乃亜はオレの胸に擦り寄る。


オレが落ち着いてうとうと出来たのは、それから30分以上も経ったときだった。










ばか、オレのばか!



(今嫌われるわけにはいかないだろうが!)




END.





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初対面で同じベッドとかねえわ

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