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――





『ただいまー』


「乃亜!」




夕方、5時半。
あれからずっとソファーでごろごろして、ゲーム立ち上げて、またごろごろして、を繰り返していた。
何度も何度も時計を見て、まだ5分、まだ10分……寝れば一時間くらい余裕かな、なんて時々目を瞑ったりして。


ようやく乃亜が帰ってきて、起き上がって玄関に走って向かう。




「……っ!」


『わ、っ』




急ぎすぎて、廊下で足を滑らせる。
靴を脱いでこちらに向かってくる乃亜に突っ込んだ。

オレが前のめりになって、乃亜がオレを受け止めて後ろに倒れこむ。

乃亜のお腹あたりに抱きつくように倒れたオレは、慌てて起き上がった。




「ごごごごめん乃亜!大丈夫か!?」


『大丈夫……慌て過ぎ、』


「ご、ごめん」




腕をついて起き上がったところで、笑った乃亜に頭を撫でられた。
それが心地よくて目を細める。




『もう、
…何かあったの?』


「だってすげー暇で…すぐ帰って来ると思ってたのに」


『学校ってこんなものよ?』


「ふうん…」




乃亜も起き上がって、二人で廊下を歩いてリビングに戻る。


オレの知ってる“学校”はトキワにあったトレーナーズスクールくらい。
そんな一日中いるようなイメージがないので、よく分からない。
オレも行ったことはあるけど…そんなに長くいた覚えがない。




『こっちでは15歳までは絶対学校に通う決まりなの。
それ以降は個人の自由だけど、大体の人はその後も学校行ってるかな。私も同じ感じ』


「……乃亜、そういえば何歳なんだ?」


『私?一応17よ』


「17!?
お、オレより3歳も上だったのか…」


『ふふ、年相応に見られたことないから大丈夫よ。大体ふたつみっつ下に見られる、背小さいしね…。
そういえばグリーン、ゲームやってみた?』


「え?ああ……ちょっとやった」


『どう?』


「片方は自分とバトルしてみて、片方は……やな予感して途中でやめた」


『あ、やっぱ気にしてんだ』


「え」


『ボンジュール、レッド!』


「!?
や、やめろって…!」


『バイビー☆』


「乃亜っ」




やっぱり全部知ってる。
そして予想通り、あのソフトは……。

ご丁寧にポーズまで真似してからかってくる乃亜に焦りつつ、定位置になりつつあるソファーに座る。
けらけらと笑う乃亜は楽しそうだった。




『ごめんごめん!
でも私はあの頃のグリーンが好きだったけどなー』


「そ、そうなのか?」


『もちろん今のグリーンも好きだけどね!
ごめんね、暇つぶし足りなかったかな…』


「あ、いや、大丈夫だぜ?」




昨日一緒に寝たときはゲームなんて用意してる様子はなかった。
朝に準備する時間もそんなになかっただろうし、気を遣ってくれただけありがたい。
そもそも暇つぶし云々より、家にいさせてくれてるだけで十分だ。




「……乃亜ー」


『ん?』




腕にくっついてみる。
乃亜がいるとなんか安心する。
二日目にして、もうほとんど完全に心を許していた。


くすっと乃亜が笑う。
オレ、乃亜のこの顔好きかも。




『どうしたの』


「なんでもない…」


『……そういえばグリーンって、寂しがりなんだっけ』


「っ、!?」


『お姉さんが言ってた』




くすくす、と尚も笑う。

お姉さん、って姉ちゃんのことか。
そういえばマサラのオレの家に姉ちゃんいたな。
余計なこと言いやがって……!

かあ、と頬が熱くなる。




『!……グリーン、目、赤い』


「…!」


『だいじょうぶ?』




顔を覗き込まれる。
顔が赤いより先に、目が赤い方を突っ込まれた。
言われてつい乃亜から顔を背ける。
思い当たる節があるが、口に出す事はできない。



昼間、
寝転がって泣いてたなんて、言えない。




「だ、大丈夫だ…」


『そう?』




寂しがり、
ずっと一緒にいた姉ちゃんが言うんだから、間違いはないと思う。
情けないけど。








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