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「乃亜」
『なに?』
「オレも、学校行きたい」
週末がやってきて、今日は土曜日。
乃亜は学校が休みだ。
朝はゆっくり起きて、その後もゆっくり過ごす。
オレは変わらずべったり。知り合った日から極端に短い、なんて知ったことか。
こっちに来てから数日が経ったけど、ここのとこずっとこんな感じだ。
やっぱりこっちでは、オレには乃亜しかいない。
そしてだめもとでの頼みごと。
断られるだろうと思うけど。
『…なんで?』
「だって、平日は毎日乃亜学校だし……朝から夜までいないし」
『あー………つまんない?』
「それもあるけど…」
『けど?』
「けど、その…。
と、とにかく学校行ってみたくて……だめか?」
はっきり言って、乃亜を困らせると思う。
世間知らずの天辺にいるオレが学校に着いて行ったって、邪魔になるだけだ。
それは自分でも分かっている。
でも、でも。
一週間のうち5日間、乃亜は学校で家にいない。
お母さんも同じように仕事。
これがこの数日間で分かったこと。
家で一人でいるのはだいぶ慣れたけど、やっぱり嫌だ。
かと言って乃亜が学校を休むわけにはいかない。
だったらオレが着いていけばいいかな、と思ったのだ。
しばらく考えるそぶりをして、乃亜が口を開く。
『…………やだ』
「え」
や、やだ?
だめじゃなくて、やだ?
うそ、オレ嫌われてる?
「な、なんで…乃亜……」
『グリーン、絶対目立つもん』
「……あ、」
そういうことか。
なんだ、嫌われてるわけじゃないのか、良かった。
なるほど、髪の色のせいか。もさっと自分の髪を触る。
確かにこっちじゃこの色以上の人はあんまり見かけない。
ごくたまに派手な色の人がいるけど。
と思ったら、乃亜がそれとは違う理由を言い出した。
『…だって、かっこいいしさ、それにうちの学校、女子の方が多いし』
「え?」
かっこいい…?
女子が多いとだめなのか…?
よく分からず、首を傾げる。
「?」
『私といたら絶対何か言われるもん。お母さん見てたら分かるでしょ。
恋人でもないのに』
「じゃあ、恋人ってことにしたらいいのか?
…乃亜って、恋人いる?」
『いない、けど』
「じゃあ、」
それじゃだめ、かな。
そう聞けば、かなりむすっとした表情。
『………やっぱ、やだ』
「え」
『無理やり恋人のふりなんてして欲しくないし、』
「…乃亜?」
下を向かれて視線をそらされる。
様子がおかしいと気付いたのはこのときだった。
『そりゃあ家にいたらつまんないと思うし、友達とか女の子とか、欲しいのわかるけど』
「…乃亜」
『私といるだけじゃ楽しくないとか、分かってるし』
「乃亜」
『悪いけど、好きな子できたらうちに置いておけないから…』
「乃亜!」
オレの声、聞こえてないのか。
そう思って手で顔を上げさせる。
途中から声が震えてるのが分かった。
こっちを向かせれば、大きな瞳に涙がいっぱい溜まってるのがすぐ分かった。
…泣き顔、初めて見た。
両手で頬を包んで、強制的に視線をオレに向けさせる。
「乃亜、オレ、別に友達欲しいとかじゃないからな。
乃亜といて楽しくない事とかないからな」
『……』
「好きな子とか女の子とかさ……乃亜、妬いてんのか」
『違う、』
「違うのか?…なんだ、期待外れか」
『へ…?』
「…わがまま言ってごめん、でも別に恋人のふり、無理やりやるわけじゃないから。
むしろ乃亜が嫌だったらやめよう?な?
お金の問題とかさ、わかってるけど……このままだとほとんど一緒にいれないから…。
それにさ、学校に男いないわけないし、乃亜だってさ」
『……グリーン?』
「だからさ、その………一緒に、いたいんだよ…」
さすがに恥ずかしくない訳なくて、目をそらす。
本音。最初からずっと思ってた。
まさか口で直接言う事になるとは思ってなかったけど。
『……相談、してみる』
「うん、よろしくな…ごめん、わがまま言って……」
『別に、いい』
まだ目は潤んでたけど、乃亜はすごく嬉しそうに笑っているように見えた。
異世界生活5
一緒にいたかった
(オレの中で、何かが芽生え始めた日)
END.
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