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しばらく無言の時が流れたと思ったら、少女の方から意外な言葉が漏れた。
『………グリーン?』
「!」
どうやらオレのことを知ってるらしい。
一応ジムリーダーだし、知っててもおかしくはないが。
相手の事は全然知らないけど、少しだけ安心して肩の力が抜けた。
「…なんだ、オレのこと知ってたのか。良かった!
で、ここ何シティだ?見覚えなくて困ってんだ」
『え?……ほんとにグリーンなの?』
「?
そうだけど…?」
首を傾げる。
オレをオレだと疑っているらしい。
会ったことないし、初対面だから仕方ないか。
まあ、ジムリーダが突然家にいたら驚くよな。
なんとなく適当に解釈して流す。
『………グリーン』
「ん?」
『あの、…ポケモン、見せて』
「へ?いいけど…」
確かにポケモンを見せれば、本人かどうかわかる。
オレはモンスターボールを取り出し、中に入ってるポケモンを出そうとした。
カチッ、
ボタンを押して様子がおかしいことに気付く。
「…あれ?
なんで反応しないんだ…?」
『………』
モンスターボールはいつもは小さくして持ち運びに便利なようになっている。
ボタンを押せば大きくなって、同時に中のポケモンが出てくるのだが。
何回押してもボールが大きくならない。
他のも試したけど同じだった。
こんなこと初めてだ。
戸惑っていると、少女がこちらに歩いてきた。
カバンをおろして、オレの手の中のボールとオレを交互に見つめる。
その後、カバンから何か取り出した。
……ゲーム?
『……』
「?
…あれ、ポケモン……?」
『グリーン』
「ん?」
『ここ、多分ね、グリーンはいちゃいけないと思うの…』
「え?」
カチカチとそれを操作する彼女。
言われた言葉の意味がよく分からなかったが、次の瞬間理解した。
見せられたゲーム画面。
指差されてるのは、確かにオレだった。
バッジもオレの持ってるのと同じ。
その周りに、知り合いのジムリーダーとバッジの画像もあった。
「え…?」
『……グリーン、ほんとにグリーンなの』
「そうだけど…」
『演技とか、コスプレとかじゃなくて?』
「こ、コスプレ?ってなんだ?」
『……。
出身はマサラ、オーキド博士の孫でお姉さんがいる。
今はトキワのジムリーダー。
ライバルはレッド。ちなみに行方不明。もしかしたらもういる場所は知ってるかもしれないけど。
……あってる?』
「なんでそこまで……」
『…だって、』
ゲームで見たもん。
それが、すべての始まりだった。
異世界生活1
来てはいけない場所らしい。
(…………つまり、どういうことだ)
END.
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