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「はー…」
誰もいない部屋で一人ため息をつく。今日はオレが学校に行けない日。
乃亜は今は授業中だろう。お母さんは仕事で少し前に出かけた。
暇を持て余すのもあれなので、さっきまで腕立てをしていた。
少しぐらい運動しておかないと体が鈍る。
一段落して、ソファーに倒れこむように寝転がる。
「(そろそろ、本気で帰る方法探さないとまずいんじゃ……)」
あれからもう二週間が過ぎようとしている。
そろそろ本格的に帰る方法を探さないとやばい気がしてきた。
働きもしないでずっとここに居座るのはどうかと思う。
最近乃亜の帰りが前より遅くなった。
大体予想はついている、…多分、バイトの時間を長めたんだと思う。
オレのために、オレのせいで。
「(乃亜……)」
乃亜には世話になりっぱなしだ。
この前それについて謝ったら、「好きでしてるからいいの」と返ってきた。
こっちに来てからの生活用品は乃亜のおかげで着々と増えている。
乃亜が普段使うお金もオレに回してくれてるんだと思う。
しまいにはバイト時間を延ばしてまで。
オレ、このまま甘えてるだけでいいのか。
「(帰れるのかな…)」
分からない。
そもそもここに何で来れたのかも分からない。
帰り方ももちろん分からない。
どうすればいいんだろう。
帰りたい。
その気持ちは確かにオレの中にある。
オレはここにいるべきじゃない、それにオレにはジムの仕事だってある。
…ただ、同時に、
帰りたくないという気持ちがオレの中で芽生え始めているのも、確かだった。
「乃亜、」
オレが向こうに帰ったら、乃亜とは別れる事になる。
嫌だ、そんなの。
「(………オレ、どうしたいんだろ…)」
分かんない、もう、何も。
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになる。
向こうに帰ればきっとモンスターボールも元に戻る。
ポケモンたちにも会える。
そもそもオレはここに居る事が間違いなんだ、帰れれば一番いいんだ。
なのに、なのに。
乃亜の存在がそれを邪魔してくる。
帰れて良かったって思えなくする。
オレ、どうしちゃったんだ。
「(オレ、乃亜のこと、)」
乃亜に抱いていた気持ちが変化してるのを、
このときオレは、確かに感じていた。
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