1








「気をつけー、れーい」


「「お願いしまーす」」




ここに来て二週間。
何も言わずに泊めてくれる乃亜とお母さんに感謝する。
特にお母さんは事情すら知らないのに。


こっちでの生活ももうかなり慣れた。
主に3パターンの繰り返し。
平日で乃亜だけ学校に行ってオレが留守番なパターン、平日でオレも着いていくパターン、休日で一緒に過ごすパターン。


今日はオレも学校に着いて行ける日。
朝は早いし、授業は何もすることはないけど、乃亜と居れるならそれでいい。
一人にも慣れたけど、やっぱり一緒に居たい。

最近になって、乃亜に抱く感情がなんなのか大体分かってきた気がした。
同時にそれは抑えられないものになっていく。
オレはいつ向こうに帰るのか分からないから。
このまま向こうに帰ったら、きっと後悔しかしない。



一応授業はある程度聞いているふりをする。
さすがに全部寝てたら、いくら見学といえど何で居るのか先生に聞かれてしまうだろう。
聞かれて困るのはオレもだけど、主に乃亜だ。
オレは乃亜の連れということになっているし。


それでも眠くなるのは仕方ない事らしい。
そもそも授業内容はオレにはさっぱり分からない事なのだ。

机の隅のほう、乃亜がノートを広げられるような場所に突っ伏す。
あと20分で授業が終わる、横目に見た時計で確認した。




「…!」




授業終了まであと10分くらいの頃。
乃亜も授業に飽きたのか、オレの頬をつついてきた。


くす、と笑ってそのままの体勢で乃亜の手首を掴んでやめさせる。
別に嫌なわけではない、構って欲しそうにしてる乃亜が可愛いだけだ。

顔の前まで掴んだ手を持ってくると、オレが押さえているせいであまり動かない指で唇を触られた。
別に何かを意識してこの位置にしたわけではない、体勢的に偶然こうなっただけ。
これにはちょっと予想外で驚く。


尚もふにふにと触られ、なんとも言えない感情になる。
確かにこの位置だと触れる場所は限られてるけど。

乃亜、これ、何も考えないでやってるのか。



なんとなくやりかえそうと思い、不意打ちで舌を出してその指を舐めた。




『……っ!』




途端、びくっと反応する彼女。
予想以上の反応にこちらも驚いた。

指の動きがストップして、乃亜が顔をそらす。
だが、もうひと舐めすれば再びこちらを振り返った。
オレの中で生まれる悪戯心。

周りに分からないように乃亜の人差し指と中指を口に含む。
だんだん彼女の顔が赤くなってきた。
静かな教室で言葉は使えない。
何か言いたそうに口をぱくぱくしているが、見えないふりをして無視する。

ちらっと顔色を伺えば、もう片方の手で口を抑えて黒板を見つめる乃亜。
まだ顔は耳まで赤い、オレから見れば声を抑えているようにも見える。
……やばい。



10分という短い時間。
気がつけばチャイムが鳴って、休み時間になった。



次は昼ごはんと昼休み。
まだ時間はある。




「……乃亜、ちょっとこっち来いよ…」


『…っ』




自分の中の感情が抑えられそうにない。
乃亜の腕を引っ張って、廊下の隅の人がいない場所へと連れて行った。










<<prev  next>>
back