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「乃亜、」
人気のない廊下。
じりっとグリーンに詰め寄られる。
授業中、暇でグリーンをつついていたら指を舐められ、ようやく開放されたかと思えばこの状況。
「乃亜ってさ、指でも感じるわけ…?」
『な、っ』
いつもの甘えたなグリーンじゃない。
距離をつめてくる彼から逃げようとするが、背中側は壁。
グリーンが壁に手をついているので横もふさがっている。
力で押し通せないのは体格差を見れば分かる。
逃げ道なんてない。
感じる、って。
私もこの年齢だ、意味が分かるだけあって顔が熱くなる。
『ちが……っ』
「じゃあなんであんな顔してたんだ?乃亜…」
ぐい、と顎を指で持ち上げられる。
交わる視線、焦る私。
やばい、グリーンの中の何かのスイッチがオンになった。
今まで見た事ない、大人なグリーンに戸惑う。
「なあ乃亜、…オレのこと、好き?」
『す、き』
「それ、どういう意味で…?」
『っ、』
どういう意味って。
答えに詰まってグリーンを黙って見上げる。
言えない。
自分の中でその気持ちは、はっきりとしているけど。
「乃亜さ、無自覚なのか何なのかわかんねーんだけど…。
指でだめだったら、他はどうなるわけ…?」
『ひ、っ』
耳元に顔を寄せられてそのまま喋られる。
かかる息にびくりと反応した。
にや、とグリーンが笑う。
「やっぱり耳もだめなんだ?乃亜……」
『やっ、ぐり…っ』
「かわい……」
『ぁ……っ』
ぺろ、と耳を舐められる。
ぞくりとした感覚が背筋を通る。
思わず出た声に口を手で塞いだ。
家でのグリーンとの違いに焦る。
急にどうしたのか分からないが、そもそも私がつついたのがいけないのかと気付き、自業自得だという諦めに似た答えが出た。
人がいないといえど、学校の廊下の隅。
今は大丈夫そうだが、いつ誰が来てもおかしくはない。
そんな状況を分かってるのかそうじゃないのか、グリーンは手を止めない。
「乃亜、声やばい…」
『やだ、やだ……っ』
「嫌?」
耳を舐められつつ、腰に手が回る。
ラインをなぞるように撫でられてはねる身体。
今まで人にこんなことされた事がなかったので、自分で自分の反応についていけない。
グリーンの声が耳元で艶っぽく響いて、くらくらする。
「ほんとに嫌ならやめるぜ…?そんな顔で言われても説得力ねーけど…」
『……っ、ここじゃ、やだ…っ』
逃げれないと悟り、逆に自分からグリーンに抱きつきに行く。
口から出た言葉はどうやら無意識に近かったようで、後で理解して恥ずかしくなる。
私、何言ってるんだろう。
服をぎゅっと掴んで顔を隠すように埋める。
次に降って来たのは、いつものグリーンの声だった。
「………急にごめん、乃亜」
『ぐり、』
「今は時間ないし、
…帰ったら、オレの気持ち、伝えるから……」
『…?』
抱き締められ、優しく頭を撫でられてほっとする。
グリーンから漏れた意味ありげな言葉に首を傾げた。
「さ、昼飯食いに行こう、乃亜」
『…え、』
「いいだろ、恋人同士なんだから」
差し出される手。
校内では手を繋いで歩かないのに。
それでもふわりと笑うグリーンに、手を重ねる以外の選択肢は私にはなかった。
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