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かばんの中のものを整理しつつ、特に何もすることがないオレを乃亜が見る。
『うーん、グリーンなら見た目はそんなに気にしなくても……ちょっとあれだけど』
「あれってなんだよ?」
『………チャラい』
「そ、そうなのか?」
『でもマツバさんとかハヤトさんとかよりは……多分大丈夫だと思う。少し目立つかもだけど。
問題はグリーンのこと知ってる人に会うか会わないかってことなんだけど』
「何かまずいのか?」
『まずいに決まってるでしょ、グリーンはここにいないはずなんだから!
それと、グリーンって名前の人はここには普通いないから……翠って呼ぶかもしれない』
「お、おう……別に何でもいいぜ」
オレみたいな名前の人は普通じゃないのか。
気をつけておこう。
『グリーン、今日中に帰れる見込みは?』
「……正直、ない」
『だよね…。
じゃあ今日はうちに泊まる…?』
「い、いいのか?」
『私はいいけど、お母さんがなんて言うか…。
私の家ね、お父さんはいないの。
お母さんは仕事で帰ってくるのは夜に近いかな。
とりあえずそれまでに“急用でうちに泊まりに来た友人”を演じてもらうから。
服とかないでしょ、散歩ついでに軽く買い物しよ』
「おう、助かるぜ……乃亜に追い出されたら、オレ今日ここで生きていける自信ない…。
ごめんな、サンキュー!」
『い、いいから』
ニッと笑うが、乃亜に視線をそらされて首を傾げる。
ただ彼女が照れたのだとわかって頬が緩んだ。
オレはもともとあんまり女の子と絡まないから、なんとなく新鮮。
ジムトレーナーに女性はいるけど、オレのジムは基本的に集まってきたトレーナーしかいないし、オレはよくジム抜け出してるしで、あんまり話さない。
話したとしてもジムの仕事関連だけ。
どっちかというと、オレよりは他のジムトレーナーと話している気がする。
一応オレに憧れてジムにいてくれるわけだから、張本人のオレには話しかけづらいところがあるのかもしれない。
下を向く乃亜。ちょっとだけ顔が赤い、…かわいい。
口に出したら変な人だと思われるかな、なんて考える。
まだ会って間もないし。
『グリーン?』
「……!
ごめん、今行く」
『うん』
呼ばれて慌てて立ち上がる、そういえば靴……と思ったら、近くに無造作に置いてあった。
玄関まで持って行ってそれを履く。
ガチャリ、
オレの世界となんら変わらなさそうなドアを開けて、外に出た。
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