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『ねえリンク、私にスープの作り方を教えてほしいの』




彼が来てからカレンダーに付け始めた丸は5個になった。
それがあと何個増えるかなんて今の私達には分からない。

偶然先生の都合で授業が休講になり、さらにバイトがなかった私は思いのほか早く帰宅することができた。
時計を見れば5時前。いつもより1時間以上も早い。


案の定今日も何も起こらなかったと苦笑いするリンクの気を紛らわせるようにあるお願いをしてみた。
先日から知りたいと思っていたのだ、リンクお手製のスープの作り方を。




「作り方?うーん、作り方って言えるほど大した作業はないんだけど…。味付けもシンプルだし」


『いいの、簡単ならそれはそれで』




この5日でかなりこの人とは距離を縮めたと思う。というよりそうせざるを得なかった。
同じ家にいる限りあの気まずさが続くとなればお互いに疲れてしまう、居づらいのは彼であるから私から動かねばと考えてちょくちょく話しかけたりゲームでもしてみないかと誘ったり。トワイライトプリンセスはあの時から動かないままであったから他のゲームをやることになったのは仕方のないこと。

彼の笑顔を見るのは好きだった。ゲーム内でほぼ喋らない彼と会話をするのも好きだった。
必死に帰る方法を探す彼とは対象的な考え方は日に日に進んで行って、それを自覚するたびに自分が嫌になるのはどうしようもなかった。一方で、そんなようなことを考えてしまうのもどうしようもないことだった。




「どうするかな、何かメモにでも書くか?」


『……ずっと不思議に思ってたけど、何でリンク日本語書けるし読めるの?』


「さあ…それは俺にも分かんない」




「感覚だ」と答える彼にも理由は分からないらしい。
私はハイラルの文字は読めない、誰かが解読したのがネットで探せば見つかるかもしれないが少なくとも感覚では読めない。
それなのにリンクは日本語は喋るし読めるしこの言い分では書くこともできるらしい。よく分からない。




『あ、でも作りながら書くのは難しいか…じゃあ私がメモ取りながら作るの見てる』


「そうするか」




材料の用意を始めた彼の隣でメモ用紙になるものはないかと辺りを見渡す。
目に入ったメモ帳と鉛筆を拾い上げて、作業に取り掛かる彼の様子を観察した。















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