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「そうだ乃亜、あとで何か書くもの貸してくれないか?」


『…? 何かあったの?』


「いや、ちょっとな」




不意に零されたリンクの言葉に首を傾げる。
何かメモしたいようなことがあったのだろうか。

まあ彼には彼なりに考えがあるのだろうとさほど気にせずに残りのスープを流し込む。
最初のと変わらない味のそれは向こうの食材とこちらの食材が似ているから作りやすいとリンクが言っていた。
後でレシピでも教わろうかと、そんなことをふと考える。


夕食の片付けとお風呂、加えて私は課題を済ませて、ちらりと見やった時計は午後10時。
明日も学校だしとさっさと寝る支度をする。
リンクには申し訳ないが帰る方法は今週末にじっくり考えよう。
とにかく今私は学校に行った後にできるだけ働かないと生活に支障が出るから。
親からの仕送りはあるが、リンクが来たからという理由で増やしてもらうわけにもいかない。




『リンク、私先に寝る。
ペンはこれ使って…メモ、大きいのと小さいのどっちがいい?』


「じゃあ大きいの借りようかな」


『わかった』




引き出しから適当なメモを取りだし、シャーペンと一緒にリンクに渡す。
「ありがとう」と受け取ったのを確認してから自分の部屋に向かった。
彼は寝るときはリビングのソファーだ、だからもう明日の朝までは顔を合わせない。さすがに男女二人で寝ることは避けなければとリンクが気を遣ってくれた。「慣れてるし野宿より全然マシ」と一言付け加えて。




『おやすみリンク』


「おやすみ、乃亜…」




ケータイだけ持って階段を上がる。
耳に入った聞き慣れていた声は優しくて、私には心地よくて。

ちょっと同棲生活みたいだななんて、その時の私はのんきにそう思っていた。




――――




「……思い出した」




一人リビングのテーブルで、リンクは呟く。
誰もいない部屋から返事など返ってこない。




「じゃあ、俺は…」




それだけ言って、彼はメモ用紙にペンを走らせた。










(きっと、)






END.












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