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「起動しないんじゃ仕方ないな…。
…こういうのって、また突然戻るとかだと思うんだよな」
どうすることもできず電源を落とし始めた私の隣でリンクが言っている事は一理ある。
時間が解決してくれるケース。
突然来たのだから突然いなくなるという可能性。
寝ている間にここに来たというのだから寝ている間に戻るかもしれない。
いつかは分からないが、それは早ければ今日にでも。
ここに現れたのと同じように気付いた時には元に戻るのだろうか。
「…ってごめんな、俺が問題起こしてんのに!
俺が投げやりでどうするんだ…………どうした?」
――“せっかく会えたのに”。
どうしてもその考えが頭から離れなくて。
Wiiの電源を切る動作をいつの間にか変なとこでストップしていて、リンクがそれに気付いた。
言われて私も気付いて「なんでもない」と再開する。
真っ黒になったテレビ画面に映ったのはどこか暗い顔をした私だった。
「……ごめんな…?
俺みたいな…生きる世界も違うようなのが、急に現れたら困るよな……」
『……!』
後ろから頭を撫でられる。その感覚はどう考えても本物で。
きゅっと結んだ唇から反射的に漏れたのは謝罪の言葉だった。
『…ごめんなさい』
「え?
謝られる事なんて何も……邪魔してるのは俺だし」
『いいの、謝りたいの。ごめんなさい』
こんなときに邪魔な感情を抱いてごめんなさい。
でもきっと私は持たずにはいられない。あんなに好きだった、夢見てた。
知られることはこの先もないだろうけど。
ディスクをケースにしまい終えて振り返ろうとしたとき、
急に勢いよく引っ張られて、
気付いたら抱きしめられていた。
『リ……っ』
「……ごめん。
俺もよくわかんないけど…手が勝手に動いてた」
後ろに回った腕は力強くて動く事ができなかった。
急に引っ張られて倒れこむような形になったためにリンクの肩に顔が来る。
身動きができない私は顔を埋めるしかなかった。
「……君と、さっき会って話したばっかなはずのに、
なんか昔から知ってるみたいな、そんな気がして」
『…え』
予想外の言葉に目を丸くする。
唯一動く手で握りしめたのは画面で見慣れていた緑色の布。
ふわりと頬に当たったのは金色に光る綺麗な髪で。
「…俺のこの気持ちも、手がかりになるのかな」
そう言って軽く笑った彼は一体、何を思っているのだろう。
もういっそのこと、この非日常が日常になってほしいだなんて。
このままずっと、続けばいいのにって。
彼の首元で唇を噛みしめた私は、
心のどこかで、そう確かに願ってしまった。
非日常生活2
(それはきっといけないことで)
END.
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