六日目-3
「え、…」
『ありがとう、炭治郎くん。明日までの短い間に何か伝えられるか、ちょっと分からないけど……でもきっとまた、四人で遊びに来てね』
煉獄さんだけじゃなくて、みんなと話せて楽しかった。もっといて欲しいけどそうはいかないから。
この後どうなるかにかかわらずみんなとはまた会いたい。握った両手は幼さが残るのにマメがたくさんできていて、彼の仕事の危険ぶりが垣間見えた。
「お、俺じゃなくて!俺を惚れさせないでください!!」
『ふふ。わたし、炭治郎くん達の担当になれて良かったな』
「あのっ、明華さ………!!」
突然ばっと炭治郎くんが後ろを振り向いたのでつられてその視線の先を追う。
そこにはただ夜の静かな廊下があるだけで、他には何もなかったのだけど、
「煉獄さん!いますよね!?」
『!?』
「……、うむ、気付かれたか」
少し距離のある脇の部屋から背の高い男の人が出てきて、心臓が止まるかと思った。
「お、俺部屋に戻るので!!明華さん、煉獄さんのことお願いします!!」
『え!?お、お願いって…!?』
「それでは!!おやすみなさい!!」
『た、炭治郎くん…!!』
すっくと立ちあがりこちらに向かって腰を90度に折り曲げ、炭治郎くんはそのまま逃げるように走り去ってしまった。
突然の出来事についていけず、彼を追うことも引き留めることもできなかった。
変わりに歩いてきたのはさっきまで話題になっていた煉獄さん本人で。どうすることもできず、すぐ近くまで寄ってきた彼を見上げることしかできない。
「隣、良いだろうか?」
『はい、どうぞ……』
着物を着た彼が先程炭治郎くんがいたのと同じ場所に座る。…どうしよう。
緊張で身体が強張る。まさかさっきの話を聞かれてたわけじゃない…よね。炭治郎くんが気付いたのがついさっきなんだから、煉獄さんがあそこに来たのもついさっきだよね。炭治郎くんは匂いで感情が分かるくらい鼻が利くんだから大丈夫だよね。
一人でぎゅっと手を握り締めていたら煉獄さんが「竈門少年と何を話していたんだ?」と切り出したので、聞かれてなかったのかなと思いほっとする。
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