最終日-1
「俺やっぱりここに住む〜〜〜!」
「そんなことできるわけないだろ、善逸」
今日もまた賑やかな朝が来た。
最終日。朝食の片付けが終わる頃にみんなを見送ることになると思う。
一週間とはこんなに短かっただろうか。今まで仕事がここまで楽しかったことがないから、みんなには感謝しかない。
『ふふ。また来てね、善逸くん』
「…うん、絶対来る!明華お姉さん、それまでずっとここにいてね!」
『うん。辞める気はないから大丈夫だよ』
このあたりで宿といえばここくらいしかないし、私も他の場所で働く気はない。まだそんなに長く勤めてるわけでもないし。
クビにさえならなければこの先もここにいるだろう。ご飯を食べながら泣いている善逸くんに微笑みかける。
『…煉獄さん、どうかされましたか?』
「! ん、いや……何でもない」
ふと目を向けたら煉獄さんが箸を持ったままぼんやりしていたので声を掛けた。視線の先には食卓くらいしかなかったので、彼がどこを見ていたのかはよく分からない。
結局昨夜はあの後これといったことはなく、「風邪を引く前に寝ようか」と言われて解散した。何かを期待していなかったと言えば嘘になるが、何も起こらないだろうとは思っていたので案の定だった。彼の反応を見るに、“万が一”は私が思っていたよりかはあるのかなと思ったけど。
炭治郎くんが背中を押してくれた手前申し訳ないけれど、やはり私から何かを伝えるのは難しい。鬼殺隊のことも柱のことも大して知らない私が、余計なことをして煉獄さんに迷惑を掛けたくない。彼はこれからまた大事な任務に戻るというのに。
だからこの気持ちは、きっとまた次に来てくれるその日まで仕舞っておこう。そのときはもっとたくさん話をして、もっとみんなのことを知って、彼のことを知って。そうしたら、もしかしたら伝えられるときが来るかもしれない。
今日も変わらず「美味い」と言いながらご飯を食べてくれる煉獄さんを、何も言わずに見守った。
「ごちそうさまでした!」
『はーい』
食後に用意した果物の盛り合わせを食べ終えた四人が揃って部屋を出て行く。
空っぽになったお皿がいつもなら嬉しいはずなのに、今このときだけは寂しかった。
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