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「すまない、余計なことをしてしまっただろうか?」


『? 嬉しかったよ?ありがとう』


「あまりそうは見えないのだが……」


『…だって、あんまり喜んだら無理してでもしてくれちゃいそうだから』




「煉獄さん、優しいし」。
俺に背を向け、床に置いた紙袋から服らしきものを取り出す彼女。…ああ、そういうことか。言い分に納得する。


俺が無理をしていないと言っていることも含めて、俺が親切心で彼女のお願いを聞いてると思われている。
もしくは罪悪感。一方的に世話になっていることへの。

罪悪感が全くないと言えば嘘になるが、別に申し訳なさだけで動いているわけではない。単に中藤にお礼をしたかっただけで。
泣くほど喜んでくれるなら、現状これが一番いいと思ったからそうしただけで。


できれば素直に受け取ってほしい。
服を両手で広げて此方に振り向いた彼女を、真正面からもう一度抱き締めた。




「分かってもらえなかったようだから改めて言うが、俺は無理はしていない。
君に世話になっている礼として、俺がしたいと思ったからしている。無理強いをしてると思ってるなら君の勘違いだ」


『……』


「本当に嫌だったら言っている。大丈夫だから、そんなに気にしないでくれ」




黙ったまま動かない彼女の頭を撫でる。これで分かってもらえただろうか。
ゆっくり体を離したら視界に入った彼女は今度こそ本当に泣いていて、心臓が止まるかと思った。




「っ…!!? す、すまない!!君を泣かせるつもりはなくて、その、俺はただ、」


『……ううん、…ごめんなさい』


「その、君の方こそ嫌だったら言って欲しい!!俺はよく分からないから、言われない限りまた同じことを、」


『大丈夫、…嬉しかったの』




――わたし、ずっと煉獄さんが好きだったから

泣きながらそう零す彼女に、先程とは違う意味で心臓が止まるかと思った。




『ごめん、びっくりさせて。知らない人に急に泣かれたらそうなるよね。ごめんね』


「いや、そこは謝らなくて良いが…大丈夫か?」


『うん。それよりね、これ着てみて欲しくて』




泣いたせいで目は赤かったが、服を広げて笑う彼女は楽しそうで安心した。
嬉しくて泣いてしまうくらい――君の知る“俺”は一体、どういう男なのだろう。


窓の外、元いた世界と変わらないものに見える異世界の夕日が赤く輝いていた。






だ、分からない


(この場所も、君のことも)




END.






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