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「今日は21巻まで読んだぞ!」




夕飯を食べながら、杏寿郎がそう切り出してきた。




『じゃあ、もう読み終わるね』


「うむ、あと2冊だ!いろいろと考えながら読んでいたら、なかなか時間が掛かってな」




「話は面白いんだが」と杏寿郎がやや硬めの表情で笑う。今日もまだ家に居てくれて良かった。

ソファの肘掛けにはしおりが挟まった「鬼滅の刃」が置いてある。
漫画は娯楽の一種だが、ただの読者である私達と違って彼の場合は“面白い”だけでは済まない。見知った人が傷付き、時には死んでいくのだから。
どうやったら助けられるのか、私が出掛けてる間にたくさん考えてたんだろうな。今もそわそわした様子だから早く続きが読みたいのだろう。

現時点での読んだ感想を聞いてみたいところではあるけれど、それで盛り上がる前に伝えておきたくて、話が途切れたタイミングで口を開いた。




『杏寿郎は……わたしが着いて行った方が、助かる?』


「! ああ、勿論だ。しかし無理強いをするつもりはない。…返事を急かすようになって済まないな」


『ううん、ありがとう』




力強い即答と気遣いの言葉を聞いて気持ちが少し楽になる。伝えたいことは決まってるとはいえ、やっぱり緊張はしていた。
昨日の今日で決めるには難しい、自分の命と将来が懸かっている重い話だから。
私の緊張を感じ取ったのか、杏寿郎の顔も強張る。

彼に急かされたからではなく、私も早めにするべきだと思ったから、そのまま話を続けた。




『今日……ちょっと、考えてみたんだけど』




お互いに料理を食べている手が止まる。彼が息を呑んだのが分かった。
一度口に出したら後戻りはしたくない。100パーセント私の意志で決めたことで、少なくとも杏寿郎が私のことで後悔しないようにしたい。
苦渋の決断みたいに映ったら、きっと彼は躊躇ってしまう。


想いを全部伝えるつもりで、しっかりと目の前の赤い瞳を見つめてから口を開いた。






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