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「特に異常はなさそうですね」
別の部屋で待機していた俺を胡蝶が呼びに来た。
布団の上に寝かされ、静かに呼吸を続ける明華。胡蝶の診断結果にほっと胸を撫で下ろす。
此処へ来るまでもそれなりに時間が経っていたのに目を覚まさなかったので心配していた。外傷はなさそうに見えたが、世界を超える間に何か大きな負担が掛かったのではないかと。
「そのうち意識が戻ると思いますよ」と言われた明華の元へ駆け寄り、頭を撫でる。
「明華さん……でしたか?詳しく話を聞きたいところですけど、煉獄さんはきっと今からお館様の所へ行かれますよね?」
「うむ、そうするつもりだ。着替えも済んだからな」
「それじゃあ、話は後で聞きますね。様子は見ておきますから、終わったら戻ってきてください」
「ああ、ありがとう!明華を頼む!」
夜に押し掛けたので胡蝶は外に出ているかと思ったが、他に治療中の隊士がいるため今日明日はここにいるらしい。助かった。
報告だけしたらすぐ戻ってくるからと伝えて屋敷を出る。なるべく早く戻ってこよう。
“向こう”と違い家の明かりなどほとんどない夜の景色に、本当に帰ってきたんだなと実感した。
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「突然消えてしまい、申し訳なかった」
蝶屋敷から鬼殺隊本部に移動し、膝をついて頭を下げる。
先駆けて鴉から俺のことを聞いていたらしいお館様は、屋敷に着いてから数分も待たずに出迎えてくれた。
「杏寿郎が無事で何よりだよ。…中で話を聞こうか?」
「はい。どこから話すべきか……」
「おいで」と言われて屋敷に上がる。どこから話すか迷ったが、どこまで話すかも迷っていた。
まずは鬼のことと、飛ばされた先が異世界だったこと。これは話しても問題ないと思ったので真っ先に話した。
滞在は一ヶ月とちょっと。その間、偶然出会った明華に世話になったこと。ここまではすらすらと話せたが、ここから先が迷いどころ。
明華は異世界の人間だが、こちらの世界のことをよく知っていた。そこで是非俺達に協力してほしいと考え、帰れないことは承知でこちらの世界に来てもらった。
彼女は我々鬼殺隊にとって有益な、とても大きな情報を持っている可能性がある。
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